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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平のサウジ・エジプト・イラン
“電撃訪問”が意味するところ

加藤嘉一
【第69回】 2016年2月2日
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アラブ3ヵ国を公式訪問した
習近平が目指す「新たな中国外交」

サウジとイランの関係が悪化し、米国が難しい舵取りを強いられるなか、狙い澄ましたかのように中東国家を電撃訪問した習主席の思惑とは?

 中国はもうすぐ旧正月(春節)を迎える。2016年は2月8日がその日に当たる。現在、すでに中国全土は「春運」と呼ばれる、春節期間中の民族大移動タームに突入しており、人々の関心はもっぱらいかにして飛行機や電車の切符を購入し、家族と1年に一度の集いを盛り上げるかにシフトしている。それ以外では、心の片隅で、依然不安定感を拭えない上海株式市場における株価動向が気になる程度であろう。

 日本の大晦日に当たる2015年12月31日夜、習近平国家主席(以下敬称略)は新年の挨拶を発表した。毎年恒例の政治イベントであり、同主席が自らのオフィスで語りかけることから、その“プライベート”にも注目が集まってきた。「頑張れば、必ず報われる」と人民たちに呼びかけた習近平は、挨拶のなかで次のようなセンテンスを口にしている。

 「今年、我が国の指導者は少なくない国際会議に参加し、少なくない外交活動を繰り広げた。“一帯一路”建設は実質的な進展を見せ、国際連合における2030年持続可能な発展アジェンダやグローバルな気候変動への対策といった国際業務に関与した。世界はこのように大きく、問題はこのように多い。国際社会は中国の声を聞きたがっている。中国の方案を見たがっている。中国がそこに欠席するわけにはいかない」

 「困難や戦火に見舞われている人々を前にして、我々は同情心、そして何より責任と行動を持たなければならない。中国は永遠に世界に対して胸襟を開放し、可能な限り困難に直面している人々に手を差し伸べる覚悟でいる。そして、我々の“友達ネットワーク”(筆者注:中国語で“朋友圏”)を大きくしていくのだ」

 そんな覚悟を赤裸々に体現しているように映ったのが、2016年1月19~23日、2016年初頭、旧正月前の最後の大型外遊として、習近平がサウジアラビア、エジプト、イランのアラブ3ヵ国を公式訪問したことである。本稿では、昨今における習近平統治下の中国外交を象徴しているかに見える同訪問をレビューしつつ、と同時に、アラブ地域における安定や動向を左右する傾向のある米国のジョン・ケリー国務長官による直近の中国訪問にも裾野を広げてみたい。その過程で、本連載の核心的テーマである中国民主化研究へのインプリケーションを模索していくことにする。

 中国政府の発表によれば、2016年は中国がアラブ国家と外交関係をスタートさせてから60周年に当たる。1956年、中国はエジプト、シリア、イエメンと国交を結んだのを皮切りに、1990年までに、22ヵ国全てのアラブ国家と国交正常化を果たしている。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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