弱みを見せられないと好かれない

「かわいすぎる女子高生社長」として注目されている椎木里佳さん。パパは「鷹の爪」で有名なコンテンツ会社「ディー・エル・イー」の椎木隆太社長です。

 早くも増刷が決まり好評の『女子高生社長、経営を学ぶ』(ダイヤモンド社)は、上場企業の社長であるパパの「起業から上場まで」のストーリーを追いつつ、ビジネスの肝がわかりやすく学べる1冊。本連載はその中から一部をご紹介します。

(取材・構成:佐藤智、竹村俊介、撮影:小川孝行)

強がるだけでは嫌われる

里佳 成功物語の後にあれだけどさ、パパが起業したときマンガ雑誌のプロジェクトから追い出されちゃったじゃない? あれは何がマズかったの?

パパ そうだねー。そのときも自分は「人に好かれる明るい性格だ」っていう自信はあったんだけど。でも、やっぱり考え方がひとりよがりで、無駄に自信満々だった。

里佳 いまでも自信満々じゃない?

パパ うん……昔は、やっぱりそこに大きく足りないものがあった。謙虚さとかね。あと、人に絶対弱みを見せないようにしてたから。結局のところ、かわいがられなかったんだよね、きっと。放り出されるような存在だったと思う。

「こいつ、強いって言ってるから別にいいんじゃね?」みたいな、ちょっと懲らしめてやった方がいいような存在。周囲と心の距離感もあったんだろうな。

里佳 強そうだから放り出される……?

パパ 今の若い人もそうかもしれないけど、他者とある程度の距離感を持って接するのが仕事というものなんじゃないかな、と思ってた。ナアナアになっちゃいけないと思うあまり、距離を変に取っちゃってたんだね。

 でも、やっぱりどこかでもっと心が近づかないとダメだったんだろうね。パパにはそういう能力が、当時すごく欠けていた。

里佳 仕事がどーのってことじゃなくて、性格とか人間的な問題ってこと?

ビジネスは自信と能力だけではうまくいかない

パパ うん、自信と能力だけでは、全然ダメなんだよ。自分が相手のことを心の底から尊敬する。そして自分自身も、「こいつと一緒ならどこまでも戦える」と思ってもらえるような人間にならなきゃいけなかった。相互にそう思えていないとダメになることが、当時はわかっていなかったんだよね。

里佳 今は変わったの?

パパ マンガ雑誌のプロジェクトから追い出され、さらに3年間の暗黒時代を経験してから、「鷹の爪」のフロッグマンと出会った。それで、「自分を信じてくれて島根から上京してくれたフロッグマンのためなら、俺、死ぬほど頑張れる」って思えたし、フロッグマンもきっとパパを尊敬してくれて「椎木さんを男にするために、俺は死んでも頑張る!」と思ってくれるほどの関係性になれたと思う。

里佳 熱いね!

パパ 一文無しに近くて社会的信頼度もほとんどゼロ状態の僕を信じてくれた人だったからね。「こんな俺でいいの?」っていう負い目もあった。そんなこと、起業した当初は絶対思わなかったよね。「絶対俺、成功するから!」っていう、変に自信満々な人間だったんだよ。

里佳 変わったね。「俺でいいの?」って(笑)。

パパ ほんとにそう。「こんな僕を本当に信じてくれるの?」「一緒にやってくれるの?」ってね。バツ3の男性が初婚の女性にプロポーズされるみたいな「こんな僕でもいいの?」的な感動(笑)。

 今では、その感謝の気持ちをちゃんと表現できるようになったし、「自分はこれに人生かけていて、なんとしてでもやりたいんだ」ということを、ちゃんと伝えることが大事だってわかった。

里佳 泣き言もいえるようになった?

パパ 自分の弱みは伝えられるようになったかな。そういう中でお互いが、「この人のためなら」っていう覚悟を持てる関係になることが大切なんだと思う。

 僕は本当にフロッグマンは戦友だと思ってる。会社で一緒に働く人を戦友って思うことは、昔はなかった。

里佳 戦友か……。同僚とか友達とかじゃなくて。

パパ そういう気持ちになれたのが、昔と今のすごく大きな違いだね。やっぱり昔は、人間的な魅力も深みもなかった。失敗経験もないし、なにか思い上がったところをまわりはすごく感じていたんだと思うな。

里佳 なんか今の私っぽいってパパに言われそう(笑)。やっぱり起業家は失敗して成長するのね。成功を重ね続けて人間的にも魅力や深みを増す方法ないのかしら……。

※明日に続きます