「褒めるのが苦手なんだよね」

 そう公言するベテラン社員は意外と少なくありません。彼らにその理由を聞いてみると、「過去に褒められた経験があまりないから」とのこと。でも、これからの時代は褒め上手にならないと仕事が出来ない時代です。なぜなら、若手社員が叱っても育たなくなったからです。

 職場の若手社員をやる気にさせるために必要なコミュニケーション術である「褒め言葉」。ベテラン社員は、これにどのように向き合っていけばいいのでしょうか?今回は、褒め言葉を大事と考える革新的な社員と相変わらず褒め言葉は不要と考える保守的な社員の衝突を参考に、褒めることの是非を考えてみましょう。

苦手なのは若手だけじゃない!
「褒める」ことができないベテラン社員

 あなたは職場のコミュニケーションのなかで、同僚を褒めることはありますか?仮に褒めるとしたら、どのような観点で相手を褒めますか?

「大変、用意周到なご提案なので勉強になりました」
というように謙虚な姿勢を示すのは簡単ですが、
「○○さんって行動力ありますよね」
と相手を褒めるのには、苦手意識が強いように思われます。

 私が取材した若手ビジネスパーソンの大半も「褒めるのが苦手」と感じていました。その理由の裏付けとして、私も出演させていただいたNHKの番組「めざせ!会社の星」のデータを参照しましょう。

 番組内の調査で、褒めることが苦手と感じている20代社員にその理由を聞いたところ、原因の1位に「お世辞に聞こえるのでは?」という答えがあがってきました。年下の同僚から褒められても「お前に言われたくない」と思われるのではないか、と彼らも決め付けているのでしょう。とはいうものの、実際は年下からだろうが、褒められるのは誰でも「うれしい」ものなので、こうした誤解は残念な話です。

 またこうした意識を持っているのは若手社員だけに限りません。社会人経験が豊富になっていくほど、
「褒めるのは得意じゃないのだよね」
などと褒めること自体から逃避する人が少なくありません。

 本来は年齢が上がれば上がるほど職場で後輩や部下を指導する立場になりますから、褒める必要性は高まります。“残念な話”では済まされない問題です。それでも何とか褒めようと努力している人はいるのですが、その場合でも、

「いいね」「偉い」「よくやった」

くらいで、ボキャ貧(言葉足らず)な人が大半のようです。