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岸博幸の政策ウォッチ

既得権者優遇で日本は世界の“産業革命”から取り残される

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第26回】 2016年2月5日
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ICTムーブメントは様々な分野で進起きていますが、政府の後押しが表層的になっている印象は否めません

 新たなICTブームが起き、市場は盛り上がりをみせています。ちょっと前まではクラウド、ビッグデータが主なキーワードだったのですが、今はIoT、AI、フィンテック、シェアリング・エコノミー(Airbnb、Uber)といった新たな流行り言葉を新聞で見ない日はないほどです。

 しかし、気になるのはそれらに関する報道が表層の動き、つまり製造業(IoT)や金融(フィンテック)といった個別の分野での新しい取り組みやサービスの説明に終始し、それらのムーブメントの本質が議論されることが少ないということです。それが影響してか、これらのムーブメントを後押しする政府の取り組みも表層的なものばかりとなっているように思えます。

「第4次産業革命」は
世界に何をもたらしているのか

 それでは、これらの流行り言葉のすべてに共通する本質的なポイントは何でしょうか。私は個人的に、それは市場競争のパラダイム転換ではないかと考えています。

 近代経済学の祖であるアダム・スミスは1776年に『国富論』で、自由競争により分業が進展して経済の生産性が向上し、国が発展すると述べました。ここで重要なのは、アダム・スミスが想定していたのは、自営業者や家族経営の企業など、今の言葉で言えば中小零細企業が元気に競い合う、分散的・分権型の市場を想定していたということです。

 ところが、『国富論』が書かれたのと同時期に始まった第1次産業革命(蒸気機関による工場の機械化)、19世紀末からの第2次産業革命(石油と電気による大量生産・大量輸送)、更には金融システムの高度化により、気がつくと市場は大資本(=大企業)が労働者を使い倒し、財・サービスを大量生産して大量消費させる中央集権的なものになってしまいました。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

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