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岸博幸のクリエイティブ国富論

消費税増税という政治のおもちゃ

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第95回】 2010年7月2日
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 参院選が近づく中で、消費税増税を巡る議論や報道が盛んになっています。支持率への悪影響を気にした民主党の菅総理や閣僚が発言内容をどんどん後退させているのは論外ですが、そもそも間違った議論が横行していますので、今週はそのうち特にひどい二つの問題を取り上げてみたいと思います。

財政健全化に消費税増税は不可欠?

 一つは、消費税増税なしにプライマリーバランス(基礎的財政収支)の回復は不可能なのか、という点です。

 政府が6月22日に発表した「財政運営戦略」を読むと、“消費税増税”という直裁的な表現はありませんが、いかにもそれなしには財政健全化は不可能というトーンを盛んに醸し出しています。しかし、それを真に受けてもいいものでしょうか。

 「財政運営戦略」には、“政府は、新成長戦略の目標とする経済成長率を達成するために全力を尽くす。一方、財政健全化の道筋を示すに当たっては、慎重な経済見通しを前提とすることを基本とすべきである。”という表現があります。

 ここで言う“慎重な経済見通し”とは、同日に内閣府から発表された「経済財政の中長期試算」に描かれている“慎重シナリオ”を指していますが、このシナリオが異常なまでに慎重なものとなっています。

 まず、実質成長率が小泉時代の実績よりもかなり低く見積もられています。2023年度までずっと1%台です。日本経済の潜在成長率が1%程度であることを考えると、政府は成長率を高めるような経済運営はしないと宣言しているに等しいと言わざるを得ません(その一方で2012年には慎重シナリオでもデフレ脱却を想定しているというのは、ちょっと理解に苦しみますが)。

 そうなると名目成長率も低いままで推移しますので、税収も当然あまり増えませんから、基礎的財政収支の改善ペースも緩やかとなります。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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