中国は昨年「クロスボーダー人民元決済システム(CIPS: Cross-Border Inter-Bank Payments System)」をリリースしました。これは“国際的”な人民元取引の決済システムです。先進国の決済システムには、他国(海外)の有力銀行は参加するのが通例となっています。しかし、このCIPSは、当初、邦銀の参加が認可されなかったのです。これは最近の中国関係の国際金融のレジーム(体制)では珍しくないのですが、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と同様に日本は排除されている印象がありました。

 最近、中国との外交関係もやや改善の兆しを見せてきたことや、中国の金融市場が混乱をしていることなどが背景と考えられますが、今年に入って、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の2邦銀の参加が認可されました。

 今後の中国経済は、以前のような10%を超えるような高度成長は見込めませんが、13億人の人口で6~7%の成長が予想されています。経済成長率は先進国と比べると非常に高く、国(経済)のレベルで考えた場合、まだまだ中国との取引には大きな魅力があります(これが欧州がAIIBに参加した主たる理由です)。

 この観点からいっても、中国との取引、すなわち人民元決済は必要不可欠ということになります。そして、この観点は、日本の企業や銀行にとっても変わりません。この決済システムでは貿易も市場取引も対応できるので、日系企業の貿易決済にも役に立つことができるでしょう。

 中国人民銀行が司る決済インフラの構成も、日本を参考にしています(ちなみに、筆者の書籍を中国語に翻訳して教科書として使っています)。そもそも、人民銀行の中央銀行決済システムCNAPS(China National Advanced Payment System)は日銀ネットをコピーしたものでした。そういう意味ではこのCIPSは日本における「外為円決済制度」です(中国特有の決済システムの発展もあります。国土が広いために「小切手イメージ処理決済システム」、またインターネットの発展にあわせ「インターネット決済システム」などもあり、一方、地場(ローカル)の決済システムも残っているという特徴もあります)。