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医療・介護 大転換

「安易に大病院に行かない」ことを推進する診療報酬改定の意味

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第49回】 2016年2月17日
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 4月から病院や診療所など医療機関に支払う治療や薬代の値段が決まった。厚労省の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は、2月10日、診療報酬を決めて厚労相に答申した。

 診療報酬は2年ごとに改定する。政府は2016年度の予算編成過程の昨年末に、全体で前回の2014年度改定より0.84%の引き下げを決めた。薬価はマイナス1.33%で、医師の技術料などの診療料は0.49%プラスとした。中医協はこの範囲に収まるように各単価を設定した。

 基本的な考え方は、病院での早期退院を促し、在宅での医療を充実させよういうことだ。介護保険のスローガンである「地域包括ケアシステム」を実現させる大きな要素である「医療と介護の連携」を推進する。

 団塊世代が7~8年後にはすべて後期高齢者となり、医療の需要が一段と膨らむのは必至。受診する患者の多数は高齢者という視点に立ち、「治す医療」から「生活を支える医療」へと医療機関の役割を根底から転換させる方向性を強めたのが今回の報酬改訂だろう。

 「治す医療」とは徹底した治療一筋の考え方。これを縮小し、慢性病と共生しながら暮らす高齢者には、日々の「生活を支える医療」が重要であり、それを「医療機関の役割分担」と分かり難い表現で説明している。

 (1)病床削減を視野に入れた「脱病院」策、(2)在宅医療の浸透、(3)認知症ケアの推進――この3本の柱で医療の新しい形を目指そうとした。

高度医療を担う大病院は専門的な診療に特化させる

 まず、病院の位置づけであるが、「2025年までに20万床削減」という既定の方針に沿って、軽症の患者が高度医療を担う大病院になるべく来ないようなとても分かりやすい新制度を導入した。追加料金とも言うべき制度だ。

 近隣の診療所のなどの紹介状を持たないで患者が大病院で診察を受けると、診察料や初診料とは別に誰もが5000円以上の支払いを求められるようにした。歯科の場合は3000円以上だ。再診の際にも、2500円(歯科は1500円)を請求する。

 これまでも都心部の病院では、紹介状がないと3000~5000円を患者から請求していたが、これを全国で義務付けにした。対象となる病院は、高度医療を提供する「特定機能病院」と500床以上の大病院。全国で約240ヵ所である。

 国民に地域の診療所への診察を促し、大病院は専門的な診療に特化させ、結果として病床削減へつなげようという狙いである。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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