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医療・介護 大転換

訪問特化型診療所の公認が“日本人の死に方”の転換点に?

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第42回】 2015年10月28日
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 16年前の介護保険スタート時に、施設ケアから在宅ケアに重心を移していく大方針が声高に唱えられた。ケアだけでなく、医療も同様。病院医療から在宅医療への移行が基本的な路線である。

 毎年膨らみ続け、予算編成の圧迫要因となりつつある医療費に頭を抱えている財務省からの圧力も大きい。在宅医療が充実すれば高額な入院医療費が大幅に削減できる。

 とはいえ、在宅重視への転換がなかなか進まない。そこへ在宅医療に舵を切る画期的な政策転換がなされようとしている。

 訪問診療を専門にする診療所が公認される。外来患者を全く診なくていい。外来患者のための診察室を作らなくてもいい。自宅や集合住宅に来てくれる医師活動が普及すれば、病院での長期入院が減る。その結果、延命治療は遠ざけられ、老衰による自然な死も増えていく可能性が高まる。

 欧米諸国に比べ、日本だけが突出して多い病院での死亡割合の急落が起きそうだ。同時に、老衰死への共鳴が広がれば、日本人の死生観の歴史的な転換が見込める。国民の意識が変われば、医療保険や介護保険の仕組みにも大幅な手直しがたやすくなる。

訪問専門診療の解禁で
どうなる?

 10月7日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)で厚労省は、訪問に特化した診療所運営を提案し認められた。訪問専門診療の解禁である。来年4月から始まりそうだ。

 訪問診療は既に制度化されてはいる。重度の認知症や寝たきり、難病などで通院が難しかったり、待合室で長時間いられない患者が対象だ。その患者の自宅や介護施設に医師が計画的に訪問して継続的に診察、治療する。医師は医療保険の在宅療養支援診療所として登録することが多い。

 その場合、医師は月2回以上必ず定期訪問して診察し、かつ24時間いつでも患者からの相談に対応しなければならない。電話で呼び出された時には、医師は投薬を指示したり、看護師を向かわせるなどで対応。医師自身は必ずしも出向かなくてもいい。

 24時間の対応を求められるため、診療所に来た患者を診察する外来より高額な診療報酬が設定されている。急な発熱や痛みなどで呼ばれた医師が患者宅などに赴く「往診」とは区別される。往診は急病への対応である。

 訪問診療を手掛ける診療所では、午前中に外来患者を受け、午後や特定の曜日に訪問するところが一般的。なかには、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどの集合住宅をもっぱら訪問する診療所もある。

 外来を事実上ほとんど閉鎖したまま、訪問特化型の診療所は既に各地で次々登場している。要介護高齢者が増えて来たためだ。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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