ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
陳言の選り抜き中国情報

中国に漂う「嫌朝」ムードも、北朝鮮制裁には向かわない

陳言 [在北京ジャーナリスト]
2016年2月19日
1
nextpage

 北朝鮮による水爆実験と人工衛星と称するミサイル発射の後、日本の世論はそろって、中国が北朝鮮に対して厳格な制裁を控えていることを批判している。しかし日本にはあまり伝わっていないことだが、今中国では人民日報系のタブロイド紙『環球時報』において、「嫌朝」が声高に主張されている。「嫌日」ならば社会の底辺にいる労働者、農民の支持を得るが、「嫌朝」を言い出すとは、これは中国すべての人のマインドを反映していると思われる。

 とはいえ、「嫌朝」を主張しても、中国政府は北朝鮮に対して厳格な制裁を行ってはいない。果たして北朝鮮国民2500万人が難民化して東アジアに混乱をもたらすことを懸念しているだけであろうか。

 北朝鮮の市民と接触した中国人は、彼らが心の底から中国を憎んでいることを知らないわけではない。また日本、アメリカ、そして韓国に憧れていることも知っている。「漁船を北朝鮮に貸して、1000万人ぐらい日本に渡ってもらい、日本の少子高齢化問題を一挙に解決してもらえばよい」と不見識な冗談を言う中国人もいるが、それに対する反論はさておき、冗談自体からすけて見えるのは難民の発生を恐れて制裁に反対する気持ちではなく、やはり他の何かがあると思われる。

政府系メディアが発表した
声高らかな「嫌朝」社説

北朝鮮の金正恩第1書記 Photo:KFA

 北朝鮮は中国メディアにとってタブーのひとつで、たとえ朝鮮半島が有事に陥ったとしても中国メディアがそれを論評することはほとんどないだろう。人民日報、新華社など二大政府系メディアは、海外からはその評論が中国政府の態度表明と見なされるので、北朝鮮問題を報道する際にはことのほか用心深くなってしまうのである。

 そのなかで、『環球時報』は2月15日に、「益々多くの中国国民が北朝鮮に対する見方を変えている」と題する社説を発表した。

 人民日報や新華社の代替メディアとして、今回発表された『環球時報』の社説は中国政府の北朝鮮に対する態度を理解する上での指針として見ることができよう。

 驚くべきことに、今回の社説は中国の北朝鮮に対する国民感情を紹介するなかでこれまで一度も使われたことのない「嫌朝」という言葉を用い、「民意はまた今日の中国の外交戦略を策定する礎石のひとつである」とまで表現している。これは注目すべきひとつのシグナルと思われる。

 原文から引用しよう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

陳言 [在北京ジャーナリスト]

1982年南京大学卒。『経済日報』に勤務してから、1989年に東京大学新聞研究所、慶応大学経済学研究科に留学、博士課程終了、萩国際大学教授。2003年に帰国。月刊『経済』主筆。2010年から日本企業(中国)研究院を設立、執行院長。ダイヤモンドオンライン、『週刊東洋経済』『アエラ』『中国経済週刊』『中国経営報』などのメディアに数多くの記事を掲載。2015年日本語日刊紙『速読中国』を創刊して編集長を兼任。


陳言の選り抜き中国情報

世界第2位の経済大国になった中国は、依然として猛烈なスピードで変化している。一方、中国にはウェブ系も含めると、何千というメディアが存在し、情報が溢れかえっている。北京在住の経済ジャーナリスト・陳言氏が玉石混交の情報の中から、中国の対外関係、多国籍企業、技術革新、中国の経済政策など日本経済や日本企業に影響を及ぼす情報を選りすぐり解説する。そこからは日本のメディアが伝える中国とは、違った姿が見えてくる。

「陳言の選り抜き中国情報」

⇒バックナンバー一覧