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「引きこもり」するオトナたち

「娘と話したいのに話せない――」
“団欒のない家族”の悲しき実態

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第27回】

 今回も前回に引き続いて、団欒のない家族の話を紹介したい。

大学入試の面接がきっかけで挫折?
明るく真面目な娘が突然「引きこもり」に

 東京都に住む70代の武山俊一さん(仮名)の家庭では、次女の和美さん(30歳=仮名)が10年ほど引きこもっている。

 メーカーに勤めていた武山さんは、すでに定年で会社をリタイヤしていて、年金生活者になっていた。俊一さんが会社を辞めた時期と、和美さんが引きこもり始めた時期が、ちょうど重なり合う。しかし、その頃の俊一さんは、外に出てこない娘のことを「引きこもり」だとは認識していなかった。

“企業戦士”として、高度経済成長期を支えてきた俊一さん。同世代の多くの父親がそうであったように、俊一さんも家庭では、子どもとのコミュニケーションがあまりなかった。

 和美さんは、引きこもってからというもの、部屋から出てこなくなり、社会とのつながりをすべて遮断した。家族との会話もない。和美さんの生活は、昼夜が逆転。昼は寝ているのか、外に出てこない。

 2人姉妹の長女は外国人と結婚して、すでに夫の国で生活していた。しかし、心配した長女が和美さんに電話やメールを入れても、返事はなかった。

 兆候は何もなかった。和美さんは、近所の公立高校を卒業するまでは明るく真面目。遅刻をたびたびして先生に叱られていたものの、学校を休んだことがない。バスケットボール部でも活躍していて、自宅でワイワイ大騒ぎできる友人もたくさんいた。

 俊一さんにしてみれば、晴天のへきれきだった。自覚したときには、「なんで、娘がこんなことになったんだろう…」と、戸惑った。

 ただ、和美さんは大学受験のとき、志望していた心理学科の面接試験で不合格。「面接試験がないところに行きたい」と、自分で専門学校を選んだ。

 俊一さんの印象では、それまで彼女が人とのコミュニケーションを苦手にしているようには思えなかった。大学の面接で、自分の予期しない受け答えに失敗し、落ちたのではないかと、俊一さんは理解している。

 彼女が突然、学校に行かなくなり、引きこもり始めたのは、専門学校に入って、その最初の夏休みを終えてからだ。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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