4月の電力小売り完全自由化まで残り1カ月。だが、主戦場となる東京電力管内で、自由化に水を差す二つのリスクが浮上している。このリスクが解消されぬまま4月を迎えれば、消費者や他の新規参入企業を巻き込んで、大混乱に陥る可能性も否定できない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、小島健志)

Photo by Yasuo Katatae、Takeshi Kojima

 4月の電力小売り完全自由化まであと1カ月。2011年3月の東日本大震災後、5年もの時間をかけて準備してきた自由化がいよいよ本番を迎えるが、足元では大混乱を引き起こしかねない、二つのリスクが浮上している。

Photo by Yasuo Katatae、Takeshi Kojima

 その一つが電力使用量を計測する機械であるスマートメーターへの切り替えが間に合わないことで、新規参入企業に混乱が生じるリスクだ。

「設置のスケジュールにまったく余裕はない」「いつ、どのくらいの契約切り替え需要が出てくるか予測できないため作業員の確保も難しく、それも工事が遅れている一因だ」

 東京電力管内でスマートメーターの設置工事を受託した複数の業者が、現場の対応の遅れを打ち明ける。

 スマートメーターは自由化される電力市場に必要不可欠で、自由化の目玉ともされる機器だ。

 東電管内では合計2700万世帯の切り替え工事が必要で、20年度末までに全て終える予定だ。だが、それと並行して、自由化に伴って東京ガスやソフトバンクグループなどの新規参入企業へ契約を変える(スイッチング)世帯には、4月までに優先的にスマートメーターへの切り替え工事を行うことになっている。このスイッチング工事が4月までに終わらない可能性が高まっているのだ。

 実際のところ、スイッチングの切り替え工事が間に合わなくても電気が止まるわけではなく、電力使用量の計測も従来のメーターで代用はできる。だが、新規参入企業にとって影響は大きい。

 スマートメーターは30分単位で電力使用量を電力会社に通信して送る機能がある。電力会社は送られてきた電力使用量を基に、法律で義務付けられている電力の需要と供給の30分単位での一致を実現させるのだが、スマートメーターが設置されていなければ、当然だがそれができなくなる。

 この背景には電気はためられないという性質がある。そのため、電力は常に需要と供給を一致(バランス)させなくてはならないわけだ。