マイナス金利政策と第1次アベノミクスの大いなる矛盾
日本銀行は、2月16日から日本銀行に金融機関が預けている当座預金にマイナス金利を適用しました。様々なことに配慮して、当座預金を3階層に分けて導入しました。そもそも、すでに海外で導入した4つの中央銀行の例では分類はなく、一つで、分かり易く運営されており、3階層に分けるということ自体が異例で、無理があります。
当座預金の階層をみてみると、各金融機関が日銀に預ける残高のうち、ゼロ金利適用部分とプラス金利適用部分を上回る部分の残高にマイナス0.1%の金利を課しました。先にこの連載にも書きましたが、この主たる目的は、円安への誘導のほか、残高を減らすことで、金融機関の行動とすると金融市場での資金の運用や国債の購入、そして融資の拡大などを行うことは推測できます。
「プラス金利適用部分」は日銀が2014年10月に導入してこれまで実施してきた「量的・質的金融緩和」のもとで、各金融機関が預けてきた残高(マネタリーベース)で、プラス0.1%を適用します。これはいわゆる第1次アベノミクスで導入されたもので、「当座残高を置いた方が景気やインフレ促進に良い」という判断で導入され、残高を増加させています。本連載にも書きましたが、それは結局、融資にも回せず、国債も買えない固定された「死に金」です。これは今回のマイナス金利導入の考え方と矛盾します。
しかし、その後、判断を反転させて、マイナス金利を導入しました。それは残高を減らすためのものです。本来は、当初のプラス金利適用部分も廃止するのが筋でしょう。しかし、それも政策の自己否定となるためでしょうか、廃止しませんでした。このように残高増加と残高減少の2つの矛盾する金融政策を抱えているのが、現在の日銀が進めている金融政策です。
しかも、金融機関への影響を少なくするために3階層にしたといいますが、本当に影響が出てくるのは以下で説明するようにこれからです。当座預金残高へのマイナス金利の影響だけではありません。逆にこの影響はそれほど大きくありませんし、回避できます。
今回、日本銀行はマイナス金利を導入し、まさに“金利”が低下しました。当座預金は“現在”の預金残高ですが、このマイナス金利というのはいうなれば日次で残高をチェックして計算することから、今日から明日への翌日物(オーバーナイト)金利です。