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民主敗北を招いた「マニフェスト選挙」の不実

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
2010年7月11日
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 第22回の参議院通常選挙は11日の投開票の結果、民主党の敗北に終わった。しかし、今回の選挙は以前にも増して多くの人がどの党に投票すればよいか迷ったのではないだろうか。

 菅直人首相が消費税増税に触れてから、消費税の増税が焦点として浮かび上がってくるかと思いきや、議論は上げるのか、上げないのかに矮小化され、「何を実現するために」という本質論は、深まることがなかった。

 各党のマニフェストを読んでも、余りにも項目数が多く、最後まで読み通すのに大変な忍耐を強いられた。ようやく読み切っても、残るのは徒労感。なぜなら、一番知りたいことが分からないからだ。各党が掲げる政策が実行されれば、どのような「国のかたち」になるのかが、さっぱり描けない。このジグソーパズルのような政策集を組み合わせても、どんな絵が浮かび上がってくるのか、想像がつかない。

 菅首相は民主党のマニフェストで、「国のかたち」という言葉を使い、それは「日米同盟を基軸」、「大胆な地域主権改革」、「「公共」を広く多くの国民が担う、新たな社会づくりの提案」で、「改革の目標は「最小不幸社会」の実現です」と語った。これで、どのような国のかたちかイメージできるだろうか。恐らく前の三つが方法論で、最小不幸社会が「国のかたち」だろう。だが、民主党、いや少なくとも菅首相が考える不幸とは何か、最小のレベルとは何かは分からない。ましてや日米同盟、地域主権、公共を国民が担うことで、最小不幸社会がどうして築けるのか、そのつながりも分からない。

 日本は今、構造変革期(以前とは違った状況に突入したという意味)の真っただ中にいる。その際たるものは、人口減少の始まりと少子高齢化の進展だ。そして問題点はかなり絞り込まれている。将来にわたって安心した生活を送れるか(つまり社会保障制度の持続性)、経済成長力の回復、環境問題、そして格差問題だろう。

 構造変革期にこそ、本来は各党が理念を明示し、理念が「国のかたち」に反映され、その国のかたちを実現するために、個々の政策が提案されるべきだ。だが、マニフェストを見ると、事態は全く逆になっている。一つひとつの課題に対して、一つひとつの心地の良い答えが並んでいる一方、個々の政策がお互いにどのような関連があり、全体でどのような「国のかたち」を目指しているかとなると、焦点が拡散して像を結ばない。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

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