オマーン国営電力・水公社で契約書に調印する三井物産の金森健プロジェクト本部長(上写真中央)。三井物産がオマーンのサラーラ工業地区で運営するガス火力発電所(下写真) Photo:三井物産

 丸紅にとって今月1日は屈辱的な日として歴史に刻まれるかもしれない。

 この日、中東のオマーンで、あるガス火力発電所の長期売電契約が締結された。

 契約の当事者は、三井物産が率いる企業コンソーシアムと、オマーン国営電力・水公社。同国の工業地区に計3150メガワットの発電所2基を建設する同公社の入札で、コンソーシアムが事業権を受注し、日本企業が参画する独立系電力事業者(IPP)としては中東最大級の案件を獲得したのだ。

 コンソーシアムは、三井物産とサウジアラビアの発電事業大手、オマーンの事業会社の3社で構成し、三井物産の出資比率は50.1%。実は、この発電所の売電契約が成立した3月1日、三井物産の出資比率に応じた全世界の持ち分発電容量が1万1400メガワットまで上積みされた。この瞬間、長らく商社業界の電力分野でトップランナーだった丸紅の1万0700メガワットを初めて抜き去り、三井物産が首位に躍り出たことになる。

 電力ビジネスは、丸紅の“おはこ”ともいえる看板事業だ。

 その歴史は1960年代にさかのぼる。日本の重電メーカーが製造した機器輸出から出発し、80年代には設計から機材調達、建設工事まで請け負うEPCへと事業を拡大。90年代に入ると発電所を自ら運営・売電するIPPを世界中で展開し、持ち分発電容量を積み増し続けた。