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10億ドルを自力で稼ぐ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか
【第2回】 2016年3月11日
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ジョン・スヴィオクラ,ミッチ・コーエン

時間に追われる人にクリエイティブな人はいない

「締め切りに追われないといいアイデアが出ない」と思っているビジネスパーソンは多いが、科学的には逆のようだ。
画期的なアイデアを生み出すことができる「ビリオネア」(資産10億ドル保有者)は、意図的に自分の時間を守る傾向がある。余計な仕事や気が散る要素をすべて排除し、本当に重要なことをやるために、時間をたっぷりと確保するのだ。

「締め切りがないと
いいアイデアが出ない」は間違い

ハーバード・ビジネス・スクールの研究によると、時間のプレッシャーとクリエイティビティの間には負の相関がある。

 仕事をするからには、一定期間内に成果を上げることが求められる。ビリオネアの仕事も例外ではない。

 ただし、ビリオネアは時間に追われることを嫌う。無理なスケジュールは組まないし、自分にできる以上の仕事量を引き受けることもない。時間に追われて焦っていたら、いい仕事はできないと知っているからだ。

 自分を追いつめることで成果を上げようとするビジネスマンはあまりに多い。「締め切りに追われないといいアイデアが出ない」と言い張っている人もいる。だが科学的には、むしろ逆のようだ。

時間のプレッシャーは、クリエイティビティを弱らせる

自由で創造的なアイデアのためには
誰にも邪魔されない時間が必要である

 いいアイデアを出そうと想像力を駆使するとき、人は普段とは違う脳の使い方をしている。神経科学者のレックス・ユングによると、クリエイティブな人は脳の評価・判断に関わる活動を一時的に弱めることができるらしい。そうすることで、自由で創造的なアイデアを出すことが可能になるのだ。

 ユングはこのプロセスを「一過性前頭葉機能低下」と名づけた。要するに、しばらくのあいだ分別を忘れて、想像力を自由に解き放つということだ。

 クリエイティブな人はとくに意識しなくても一過性前頭葉機能低下の状態に入ることができる、とユングは言う。だが普通の人でも、意図的にその状態を経験することは可能だ。

そのためには時間が不可欠である。誰にも邪魔されない時間をつくり、脳の制御を一時的に低下させるような環境に身をひたすのだ。

時間に追われる人が1日あると
数日はクリエイティビティが弱まる

 一部のクリエイティブな企業では、業務時間の一定割合を各自の自由な活動に当てている。だがそうした試みはまだ少数派だ。たとえ導入していても、本当に自由ではなく一定の成果を上げることが求められている場合も多い。

 そういうプレッシャーのもとでは、クリエイティブなアイデアを生むのは難しい。仕事量をふやして時間の余裕をなくせばなくすほど、アイデアの質は低下してしまう

 ハーバード・ビジネス・スクールの研究チームも、この説を裏打ちするような調査結果を出している。彼らは7つの会社の177人の従業員を対象に、その日の仕事は時間に追われていたか、成果はどれだけ上がったか、仕事内容はクリエイティブだったかという質問用紙を毎日記入させた。自己申告だけでなく、会社側から仕事内容と締め切りの客観的なデータを集め、各社員のその日のクリエイティビティを上司に評価してもらった。

 回答を分析した結果、時間のプレッシャーとクリエイティブな成果とのあいだには負の相関があることがわかった。忙しい日には、たとえ仕事量を多くこなしても、クリエイティブな成果が上がらないのだ。

 それだけなら予想の範囲内かもしれないが、さらに見逃せないのは、クリエイティビティの低下が持続するという結果だ。時間に追われる日が1日あると、そのあと数日はクリエイティブな成果が出せないのである。このことからも、時間の余裕がいかに大事かがわかるだろう。

ビリオネアは
まったく忙しそうに見えない

 時間に追われて焦ると、クリエイティビティは低下する。だからビリオネアは、けっして焦らない。実際、我々が多くのビリオネアに会って気づいたのは、彼らが「今」を生きているという事実だった。

 ジョー・マンスエト(モーニングスター社CEO)に出会って最初に感じたのもそのことだ。モーニングスター社のオフィスに入っていくと、マンスエトは会議室の広いテーブルに着き、手を組んでじっと座っていた。彼は何もせず、ただ我々を待っていた。「さあ、準備はできていますよ」と彼は言った。

 一流企業のオフィスでビリオネアにインタビューするのだから、当然いろいろな仕事や質問や電話などが割り込んでくるだろうと予想していた。だがそんなことは皆無だった(これはマンスエトだけでなく、ほかのビリオネアたちにインタビューしたときもそうだった)。この世でやるべきことはそのインタビューだけだ、と言わんばかりに、彼はとことん集中して我々に向かい合っていた。

 電話は一度も鳴らないし、誰も外から割り込んでこない。彼はほかのすべてをシャットアウトして、今この瞬間に集中していた。

 このような傾向はビリオネア全般に見られる。仕事は山ほどあるはずなのに、余計なことは一切考えず、目の前のことに全力で集中するのだ。

 自分や同僚の仕事ぶりを振り返ってみれば、それがどれほど困難なことかわかるだろう。まわりを見渡せば、誰もが3つくらいの仕事を同時に進めつつ、片手間に誰かと話をしたりしている。みんな見るからに忙しそうだ。

 一方、ビリオネアはまったく忙しそうに見えない。もちろん暇なわけではない。ビリオネアは意図的に自分の時間を守るのだ。余計な仕事や気が散る要素をすべて排除し、本当に重要なことをやるために、時間をたっぷりと確保する。

時間を確保することが
アイデアを生み出す原動力になっている

 つねに時間に余裕があるから、ビリオネアは持ち前の好奇心を存分に発揮できる。瑣末な仕事に追われることなく、たっぷりと本を読み、いろいろな人と話をして、すばらしいアイデアにつながる材料をどんどんストックしている。

 その余裕こそが、世の中の流れを読み、説得力のあるビジョンを築き上げる原動力なのだ。

(※この原稿は書籍『10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』の第3章から一部を抜粋して掲載しています)

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ジョン・スヴィオクラ 

元ハーバード・ビジネススクール助教授。世界的コンサルティングファームPwC(プライスウォーターハウスクーパース)パートナー。戦略・イノベーション分野のリーダーとしてフォーチュン500企業に助言を行う。PwCのシンクタンク「Exchange」のトップを務め、国際的なリーダーのレベルアップを図っている。ハーバード大学卒業、ハーバード・ビジネススクールで修士号、博士号を取得。

ミッチ・コーエン

PwCヴァイス・チェアマン。PwCで33年間キャリアを積み、うち22年はパートナーとして経営に携わる。通信、テクノロジーの分野で多数のフォーチュン500企業を顧客として持ち、多岐にわたる分野で、長年リーダーシップの開発に関わる。


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