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外科医のつぶやき

“不思議なことが起こる古い病院”それはいったい何?

柴田 高
【第19回】

 新築前の旧T病院は鉄道沿いにあり、本当に古く、暗い病院であった。ある日、ふと新聞の夕刊を見ると、「私はこんな病院で死にたい。産科のある病院で」というエッセイが掲載されていた。そのエッセイと共に掲載されていた写真は旧T病院であった。外科医長であった私はなんとも言えない思いを抱いたことを思いだす。

 そのころ、昨夜当直したという同僚のO先生が、目をくりくりしながら、話しかけてくる。「昨日、夜中の2時に東病棟で…」といきなり何を言うのかと驚いた。話の内容はこうであった。真夜中に当直室の電話が鳴り出てみると、東病棟の深夜勤務の看護師さんから「大変だからすぐ来て!」と要請電話、その病棟へ行くと、大部屋の病室の下から“ゴーン、ゴーン”と低い音、そして、窓ガラスがゆれる共鳴音、患者さんがおびえて布団のなかにくるまっている。ポルターガイストのような異様な雰囲気があたりを包む。その振動は、数分で収まった、と言う。

 「何かの音が共鳴したんじゃないの」と私が言う。

 「あれはそんなんじゃない、守衛さんも呼んだんだけど腰抜かしていたよ」とO先生。

 しかしながら、その現象は数週間、決まったように夜中の2時前後に数分間続き、病院中で大問題となった。ある人は本当におびえ、うわさはうわさを呼び「急にテレビがついて画面がどんどん変わる」という作り話のような話まで私の耳に入ってきた。数日後、振動の激しいその病室は閉鎖され、窓ガラスは共鳴音を防ぐためにガムテープで隅々が固定された。

 私は知人にその状況を説明すると「それは自然科学では説明できない何かがあるかもしれませんね。本当に特定の時間に起こるのであれば磁場など物理的計測で何かが出るのでは」と真剣に考えてくれた。ポルターガイストの証明ができるのではと私は思ったが、あまり関わりたくないというほうが本心であった。

 それから2週間ほど騒ぎ続いたのだが、病院当局の原因究明が進まない中、空調機器の影響であると説明し、職員は「古い病院だから何が起こっても」と納得せざるを得なかった。

 しかし、数週間後大変なことが起こったのだ。

 「ドーン」というミサイルが近くに落ちたような大きな音と振動で私は目をさました。ベッドは大きく揺れ何が起こったかと冷静に考え始めたとたん「子供の2段ベットは大丈夫か」と反射的に子供部屋へと向かった。「大地震や、お父さんとこっちへ来い」と二人の息子を抱きかかえて寝室へ連れていった。その後も大きなゆれが数分間続き川の字に家族全員がくっついて大きなゆれが去るのを待った。

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柴田 高

川崎医科大学卒業後、大阪大学論文博士課程修了。日本外科学会指導医。日本消化器外科学会専門医。現在は大幸薬品社長。著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』がある。


外科医のつぶやき

現在は製薬会社役員である外科医師による医療エッセイ。患者の知らない医師の世界。病院の内側が覗ける、ここだけの話が満載。

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