経営 × 財務

企業と投資家の「高質な対話」によるガバナンスが必要になる
北川哲雄・青山学院大学 国際マネジメント研究科教授

【第11回】 2016年3月29日
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統合報告書で長期投資家にメッセージを発信

――最近は、企業が開示する情報としてESG(環境、社会、統治)など非財務情報も重視されるようになり、財務情報等と合わせて投資家に伝える統合報告書を作成する動きが加速しています。

 スチュワードシップ・コードは、企業を、短期的ではなく、最低でも5~6年の長期の時間軸で分析することを求めています。そこには、真摯に企業価値を見る長期投資家になりなさいという意図が込められています。

 長期的な視点で企業を見る際は、企業の持続可能性を考慮するうえでESGなど非財務的側面を織り込んだ投資評価が必須となります。企業は、投資家の求めにかみ合うように非財務情報を開示する必要があります。

 日本では、CSRやESG活動は、本業とは別に取り組むべきものと見られがちでした。これまでは社会の持続可能性のために必要なものと言った位置づけが濃厚だっだと思います。しかし企業の持続可能性自体にとっても重要なのです。

 たとえば、発展途上国で賄賂を送ったり、児童労働を行ったりすると、大きな社会問題になり、企業の長期業績に深刻な影響を及ぼします。これに対し、たとえば、英国の運用会社、シュローダー社は「リスポンシブル・インベストメント(責任ある投資)」を標榜して、実際にESGやCSRの要素を投資判断に織り込んでいます。企業は、環境・社会問題を含めて世界に対して「責任あるビジネス」をしなければ、投資の対象にはなれないのです。

 この背景にはユニバーサルオーナーと呼ばれる欧米各国のアセット・オーナー特に公的年金基金が社会的持続可能性と企業の持続可能性両方を考慮した投資を求めていることがあります。

――優れた統合報告書とは、どのようなものだと考えていますか。

 統合報告の趣旨を踏まえれば、長期投資家にターゲットを定めて情報を開示すべきだと思います。織り込むべき情報は多様ですが、長期投資家向けに限定し、さらに属する産業セクターにとって重要な情報に絞ることで、企業価値を向上させるうえでのポテンシャルを分かりやすく提示し、同一セクター内の他社と比較検討する上で有用な情報を的確に開示することが必要でしょう。

 投資家に対して強いメッセージを持ったレポートの作成には、経営者の中期的な経営方針に関する透徹した考えが大切です。表面的に繕ったデコレーティブな表現をしていても経営者の強い意志が欠けた報告に、情報としての意味はありません。そうした報告書を読んだ投資家は、経営者の熱意や能力を疑うことにもなるでしょう。

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