経営 × 財務

企業と投資家の「高質な対話」によるガバナンスが必要になる
北川哲雄・青山学院大学 国際マネジメント研究科教授

【第11回】 2016年3月29日
previous page
4

 以前、読んだことのある、英国の鉱山会社のレポートは、コスト削減のために図表や写真を使わない、文字だけのレポートでした。それでも、業績を伸ばすには安全性が重要であることを強調し、安全対策による事故率低下の実績を論理的に示していたことで、説得力があり、かつ経営者の気骨あふれる報告と感じました。当たり前のことですが、重要なのはコンテンツです。

ベストプラクティスを目指す積極的な取り組みを

――コーポレート・ガバナンス・コードを受けて、ガバナンス強化に、どのように取り組めばいいでしょうか。

 コーポレート・ガバナンス・コードには「取締役会評価も重要である」という一文が入っています。こうした何気ない一文にこそ、重要な意味が込められているものです。取締役会評価を外部委託して行う例は、英国に見られますが、日本企業でもTDKが、この動きに目をつけて昨年行ったアニュアルレポートに取締役会の外部評価の結果を掲載しています。こうした先進事例への積極的な取り組みが、外国人投資家からポジティブに認識されることの影響は大きいでしょう。

――企業と機関投資家の間の対話の質を高めるにはどうしたらいいでしょうか。

 まず、広告のPRと、専門家を相手にするIRのコミュニケーションの仕方はまったく別物だということを理解すべきでしょう。IRはイメージではなく、情報の中身が大切で、本質的なことをきちんと伝えなければなりません。ある大手電機メーカーの社長が、数年前に米国で資金調達の説明会を開いた時に、数字の説明がうまくできず「何しに来たんだ」と言われたという話を聞いたことがあります。

 投資家は、企業経営の状況を十分に理解し、共生していくために積極的にモノを言い、経営者は、投資家から受けた厳しい指摘からヒントを得て、適度な緊張感を持って経営に望む。そこに高質な対話の極意があるのだと思います。

――これからのコーポレートガバナンスはどんな方向に進むのでしょうか。

 最近、私が関心を持っているのが議決権の行使についてです。日本の機関投資家は行使内容を結果も含めて開示していませんが、米国ではカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は、大手企業の場合、投票前に議案への態度を明らかにして、他の機関に対する議案の賛否に影響を及ぼしています。

 これが発展すれば、将来、議案をめぐって大手機関投資家同士が、もっと事前にオープンに議論を始めるようになるかもしれません。それは、インベスター・キャピタリズムからピープルズ・キャピタリズムへの発展と、とらえることができる状況を生む可能性を持っていると感じています。

previous page
4

最新コンテンツ CFO、CEO、ビジネスリーダーが知るべき経営プラットフォームの概念と実際

財務基盤改革の最新事例を知る Case Study


「プロ経営者の教科書」CEOとCFOの必修科目

企業経営に携わるCEO、CFOには、M&A、コーポレートガバナンス、リスクマネジメント、財務戦略、グループ経営管理、テクノロジーなど、様々な分野の知識が求められる。こうした知識を蓄えることは経営者の「教養」を深めることにつながり、企業経営の質を高めて行く。CEO、CFOが学ぶべき「必修科目」とは何か。各分野の第一人者たちに聞いて行こう。

「「プロ経営者の教科書」CEOとCFOの必修科目」

⇒バックナンバー一覧