“未病(病気ではないが健康ともいえない状態)の代表”といえば、肥満である。単に「体重が増加した状態」だけを指すのではない。体重にかかわらず、「内臓脂肪が過剰に蓄積した状態」が、肥満である。
肥満は血糖、血圧、コレステロール、中性脂肪の数値を押し上げ、その一つひとつは軽度異常であっても、重なり合うことで、血管内の動脈硬化を進行させる。その結果、狭心症や心筋梗塞、脳卒中の発症につながる。
東洋医学では、肥満は治療の対象である。治療の三本柱は漢方薬、食養生、そして運動だ。
第1の柱である漢方薬のなかでも有名なのが、褐色脂肪組織を活性化する「防風通聖散」だ。褐色脂肪組織には体内のエネルギーを燃やす働きがあり、活性化させると体温も基礎代謝も上がる。ある研究では、「食事・運動療法グループ」よりも「食事・運動療法+防風通聖散服用グループ」のほうが、3カ月後の皮下脂肪と内臓脂肪量、腹囲面積が減少した。
ただし、この結果は防風通聖散の効能を立証する一方で、「漢方を飲んだだけで効果が出せるわけではない」(田原英一・飯塚病院・東洋医学センター漢方診療科部長)ことも示唆している。加齢と運動不足によって中高年は基礎代謝が低下する。「防風通聖散で体を燃焼しやすくすると同時に、適切な食事や運動を心がけることが重要」なのである。