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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

米国や中華系の利益至上主義に
日本人はどうすれば勝てるのか

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第45回】 2016年3月16日
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幼稚園の先生を相手に
クッキーを販売する5歳児

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 筆者はマレーシアに住んでいるが、先日、同じマレーシア在住の知り合いの日本人夫婦から興味深い話を伺った。

なんでも商売に結びつけるメンタリティを持つのは、中華系だけでなくアメリカ人も同じ。日本人がグローバル競争で彼らと伍して戦うには、どうしたら良いのだろうか?

 その夫婦には5歳になる娘さんがいる。娘さんは現地の幼稚園に通っていて、そこには日本人は全くおらず、マレー系マレー人、中華系マレー人、インド系マレー人の子たちが入り混じっている。そんな中、その5歳の娘さんも、皆に交じって仲良くやっているという。

 それは結構な話なのだが、先日、娘さんのお友達数人を家に呼んで、皆でクッキーを焼いたのだそうだ。おいしそうなクッキーがたくさんできたので、そこにいるお友達だけではなく、幼稚園の先生にも分けてあげようと、先生たちに渡すためのクッキーを袋に詰めていたところ、中華系の女の子がこう言ったという。

 「私ね。このクッキー、美味しそうにできたらから、先生に売ってくる!」 

 日本人のお母さんは、それを聞いてちょっとびっくりした。娘と同じ5歳児の女の子が、すでに先生相手に「商売」を考えているのだ。それだけではない。そのクッキーは、日本人のお母さんが、子供たちにお菓子作りの楽しさを教えてあげようとして開いた「ホームクッキングスクール」だった。材料から何から、彼女が全部自腹で用意してあげたものだ。

 そうやって作ったクッキーを先生に売るというのをお母さんが聞いたときには、さすがに、それは冗談だろうし、親がそんなことさせるわけないだろうと、思っていた。だが、なんとその子は翌日、本当に先生たちにクッキーを売りに行って「こんなにもらったあ」とお金を皆にみせていたというのだ。

 その子のご両親は中華系マレー人で、両方ともデザイン系の会社に勤めているそうで、ごく普通の(でもマレーシアの中ではちょっと裕福な)家庭だそうだ。

 その話が面白かったのは、マレーシアでの中華系のイメージにあまりにハマっていたからだ。マレーシアでは中華系は民族的にはマイノリティだが、経済的には強い。つまり、マレーシアの金持ちは大抵中華系である。

 その理由は、他の民族に比べて中華系が「商売がうまい」からに尽きる。中華系が一斉に休みをとる春節の時期には、普段大渋滞になるクアラルンプール都心が、お盆中の丸の内のように閑散とする。中華系が休むだけで、マレーシアの経済は停滞してしまうのだ。

 その一方で、やはりマレーシア内でも中華系は「金にうるさい」「がめつい」といったステレオタイプの印象も持たれている。良くも悪くも「商機」に敏感で、金になるならば何でもやるといったイメージがある。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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