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三谷流構造的やわらか発想法

創世記と薔薇窓と襖絵と~分解しては見えないもの

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第134講】 2016年3月17日
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天才ミケランジェロの天井画『創世記』

 1992年、システィーナ礼拝堂を訪ねました。バチカンのサン・ピエトロ大聖堂に向かって右隣の建物です。ここに、ミケランジェロの『最後の審判』があるのです。

〔正面奥が壁画『最後の審判』、上部が天井画『創世記』〕

 『最後の審判』は、ミケランジェロが晩年66歳の時に5年を掛けて描き上げた大作です。そこには再臨したイエスを中心に、400体以上の神・人間が描かれています(*1)……でも、私は見ていません。ちょうど当時、日本テレビが資金援助した大修理(*2)の真っ最中で、私が見たその壁には、保護シートと実物の数分の一のレプリカが掛かるのみ(T-T)

 故に私にとってのシスティーナ礼拝堂は天井画の『創世記』に限られます。

 これはその20年前、彼が壮年のときにやはり4年を掛けて描いた超大作です。弟子の仕事ぶりが気に入らずクビにして、天井画を一人で描き続けたために完成時にはクビが曲がってしまっていた……とか。この天井画も凄いの一言に尽きる出来映えです。

礼拝堂に入ると、多くの人たちが床に寝転がっています。始めビックリしますが、すぐに納得します。この『創世記』の迫力をフルに味わおうと思えばそれがベストの鑑賞スタイルなのだと。もちろん自分もそれに見習ってゴロリ。十数分をそうやって過ごしました。

 視界一杯、いや視界を超えて拡がる、巨大な天井画。旧約聖書『創世記』の9場面、「天地創造」「アダムの創造」「楽園追放」「大洪水」……が、頭上10mから迫ってきます。

 「彫刻家」ミケランジェロに、無理強いして描かせる(*3)だけのテーマでありキャンバスです。

われらが貴婦人の『薔薇窓』

 場所は変わって、パリ中心のシテ島にそびえるノートルダム大聖堂。フランス語でNotre(ノートル)-Dame(ダム)=私たちの貴婦人、とは聖母マリアのことを指し、大きな聖堂には良く付けられる名前です。ランス、シャルトル、アミアン、ストラスブールの各都市にある「ノートルダム大聖堂(*4)」はパリのそれと同じく、すべて世界遺産でもあります。

*1 1541年に完成したオリジナルでは、描かれた者たちはほぼ完全な裸体だった。後に腰布などが描き加えられたが、修理によりほとんどが元の姿に復元された。
*2 修理自体は1980年に天井画『創世記』から始まり、祭壇画『最後の審判』などを経て1994年に完了した。
*3 当時、彫刻家を自認するミケランジェロは、ローマ教皇ユリウス2世からの作画要請を一旦は拒絶した。
*4 大きさではアミアンのものが最大。高さ113m、奥行き145m、幅29m。1288年完成。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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