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本社と関連会社という
ヒエラルキーを排除する

――その後、2006年に本社に戻り、まず変革の取り組みを行ったのは、かつて17年間勤務した広島製作所でした。当時、経営陣の間では、広島を改革のロール・モデルにしようという思いがあったのですか。

 当時の三菱重工は、各事業所への帰属意識が非常に強くありました。だからこそ、まずはみずからの出身地から手掛けなければなりませんでした。そうでなければ、「自分の出身地だけは守るのか」という不満の声も出かねません。

 広島製作所の改革は徹底的にやりました。製鉄機械事業のみならず、コンプレッサー・タービン事業を分社化するなど、広島製作所の社員には苦労を強いることになりました。しかし、広島製作所の社員たちが頑張ってくれたおかげで、その後、他の事業所に対しては「広島製作所でこれだけのことをやったのだから」と説得しやすくなりました。

――全社の改革に当たり、他社で参考にした事例などはあるのでしょうか。

 特定の事例を参考にしたということはありませんが、過去に当社が変革に失敗した理由はかなり研究しました。

 たとえば、オイルショック後の造船不況においては全国で5カ所あった造船所を新造船は長崎、神戸、下関の3カ所に集約して、横浜では修繕船だけにするという大改革を行いました。その後もいろいろな構造改革にトライしたのですが、大半はうまくいきませんでした。

 その大きな理由の一つは、強すぎる事業所の存在にありました。事業所はそれぞれがまるで一つの企業であり、複数の事業所が同一製品を生産したり、独自の文化を持っていました。

 事業所は各事業部から構成されており、さらに各事業部の上には事業本部があります。事業所は十数カ所あり、さらに各事業所の下に事業部が複数あるため、事業所と事業部を掛け合わせるだけでも、ものすごい数の組み合わせができます。それゆえ、意見集約をするのに大きな労力を要しました。

 事業部、事業所、事業本部という三重構造を変革するため、宮永さんは前任の大宮社長時代にさまざまな取り組みに乗り出し、そこから一気に変革が進んでいくことになります(詳しくは4月11日公開予定のインタビュー参照)。

 行うことが複雑であればあるほど、組織はなるべくシンプルにすべきだと思います。当時は約700にも上る製品を抱えており、さらに三重構造とあっては、厳しいグローバル競争を勝ち抜くことはできません。組織をシンプルにすることで、経営のスピード感を高めるだけでなく、それぞれの事業に対して誰が説明責任を果たすのかがはっきりします。

――しかし、実際に事業本部へ統合するとなると、当然、事業所からの反発もあったと思うのですけど、そこをどうやってうまく収めたのですか。

 大きな規模であったり、長い伝統があるものを変えようとしても、なかなか簡単には動きません。まずは比較的小規模で、なおかつ、最も難しい問題から解いて、変革の効果を示すことが大事です。

 2006年当時、私は機械・鉄構事業本部で副事業本部長でした。この事業は、いまでこそ当社で2番目に利益を稼ぎ出す部門に成長しましたが、当時は赤字事業でした。

 経営環境は厳しい状況が続いていましたが、何より一番の問題は、その事業に携わる社員たちが頑張ろうという気持ちになれない統治体系にあったんだと思います。そのため、各事業所にある一部の事業を分社化し、自分たちの責任で経営してもらいました。

 分社化というと「事業を潰すための布石じゃないか」とか「待遇が悪化するんじゃないか」と反対する人もいましたが、それはまったく違うということを明確に伝えました。

 いまだに三菱重工の「本体」だとか「関連会社」といった言い方をする人がいますが、これらの言い方はいずれ止めようと思っています。三菱重工のいずれの部門であろうが、グループ会社であろうが、すべて同格だと考えています。

 分社化した会社の業績が上がれば、「本体」の社員よりも多くのボーナスをもらっていいと思います。とにかく、どの社員も努力に対する正当な評価を行うべきでしょう。

――たとえば分社化した会社のトップが非常に高収益な会社をつくり上げたら、宮永さんよりも高い報酬をもらってもいいのですか。

 もちろんです。いまのところ、そこまでの会社がなかなか出てきていないのは寂しいですが、リスクに見合うリターンを得るのは欧米企業などでは当たり前ですし、日本でもそういう時代が来ると思います。

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「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係

グローバル経済の本格化によって、歴戦のビジネスパーソンの経験と勘は裏切られる可能性が高まった。トップマネジメントは、リスクを洗い出し、測定し、定量化し、それを踏まえて経営戦略を説明できなければいけない。その際、CEOはCFOの力を借りずしては考えられない。CFOには経営陣の中で論理的な判断のよりどころとなり、CEOを補完すると同時に、戦略志向やビジネスリテラシーも求められている。新しい時代のCEOとCFOの関係はどうあるべきかを求め、取材した。

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