かつてリーダーシップといえば、「チームの最前線」に立って指揮をとるものだった。しかし今は違う。藤沢氏は、「チームの最後尾」にまわり、「任せて見守る」チームマネジメントこそが、メンバーの成長を促すという。1000人以上の経営者へのインタビューを15年にわたって続けてきた藤沢久美氏の最新刊『最高のリーダーは何もしない』から、その実例を紹介する。

ホウレンソウ禁止で
「自ら動くチーム」をつくる

年140日の休業日と40日の有給休暇、実質「年間の半分が休み」という企業があります。上場もしており、黒字を上げ続けているその会社の名前は、未来工業株式会社(本社 岐阜県大垣市)。建築に関連する電気部材や設備資材を製造・販売している企業です。

同社のユニークな経営スタイルを生み出したのは、創業者の故・山田昭男さん。山田さんは、もともと家業を手伝いながら、劇団「未来座」を主宰し、劇団活動をしていたというユニークな経歴の持ち主です。

演劇だけでは食べていけず、劇団仲間と一緒に立ち上げたのが、この未来工業という会社でした。会社は立ち上げたものの、劇団の活動時間も大切ですから、同社では残業も禁止で、休日も十分に用意しました。

「社長トーク」に出演いただいた前社長の瀧川克弘さんも、山田さんがつくったユニークな仕組みを継承されていました。

たとえば、同社では「ホウレンソウ」が禁止されています。その理由について瀧川さんは、次のように説明してくださいました。

「報告・連絡・相談とは、いわば情報の伝達です。現場から情報を聞いた上司は、現場を見ないで判断をし、部下に指示を出すことがほとんどで、それに基づいて部下が行動することになります。一見うまく回転しているようですが、1つの問題は、部下は上司を選べなくて、上司は部下を選べるということ。

自分の生殺与奪権を握っている上司に対して、自分に都合の悪い『ホウレンソウ』などできるかということです」