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米金融改革法がついに成立
弁護士だけが潤う“宴のあと”

週刊ダイヤモンド編集部
2010年7月26日
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 1929年の世界恐慌後の改革以来、80年ぶりの大改革ともいわれる米金融規制改革法が7月21日、オバマ大統領の署名を経て成立した。だが、成立してもなお、その効果は不透明なままである。

 米国では昨年6月に財務省案が公表されて以降、金融危機の再発を防ぐため、1年以上にもわたって金融規制の議論が繰り広げられてきた。

 危機の原因は、米金融機関が過度なリスクを取ってきたことにある。そのため法律は、こうしたリスクの高い業務を禁止するなど、確かに金融機関にとって厳しい内容となってはいる。

 内容の大きな柱の一つは「ボルカー・ルール」だ。これは、預金を扱う銀行に対し、自己勘定取引やファンドビジネスを禁止するというもの。

 また、もう一つ影響が大きいと見られているのが、「デリバティブ業務を銀行本体から分離させる」という規制。リスクの高い業務を本体から分離しても、子会社において新たに資本などを積み増す必要があり、収益を圧迫することは避けられないと見られている。

 たとえば、米金融大手ゴールドマン・サックスは規制導入を睨み、今後10年で保有する155億ドル規模の未公開株(PE)ファンド、ヘッジファンドなどを清算することを決めた模様だ。

 ところが、こうした厳しい見方とは裏腹に、最終的な影響や効果がどれくらいあるかについては不透明なまま。法律の大枠は決まったものの、その運用は金融当局に委ねられているからだ。

 というのもこの法律、中身は「抜本的な改革というより、無数の小さな改革の寄せ集め」(石原哲夫・みずほ証券シニアクレジットアナリスト)にすぎないものだからだ。

 法案審議の過程では、利益誘導を目論む議員たちが修正案を連発、最終的な法律のページ数は2300をゆうに超えた。上下両院で法案を一本化する際には、紙の山に囲まれた議員やスタッフたちのあいだで配布漏れや削除漏れすらあった。

 こうした背景には、11月に控える中間選挙がある。失業率が10%前後で高止まりするなか、金融機関の高額報酬は世論の大きな反発を招いた。そのため金融機関が格好の的となり、「なんとしても法律を成立させてから中間選挙に臨みたかった」(米金融関係者)。

 金融機関が現時点で自社の収益への影響についてコメントしているのも、「影響がないと言えば、また世間からたたかれるから」(同)なのだが、実際には長い移行期間まで取られるため、「当面は特に影響はない」(同)との見方がもっぱらなのである。

 今後、1年以上かけて中身を精査するために、金融機関は多くの弁護士を雇う必要があるともいわれる。再発防止のために長く議論してきたすえに、弁護士らの懐を潤すだけの結果になれば身もふたもない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)

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