ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
佐高 信の「一人一話」

城山三郎に教わった阿川佐和子の「聞く力」

佐高 信 [評論家]
【第42回】 2016年3月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

家でも職場でも怒鳴られっぱなし

 『聞く力』が大ベストセラーになってからも、阿川佐和子はけっこうしゃべっていると思うが、いまから30年余り前、まったくと言っていいほどしゃべらない阿川が隣にいた。秋元秀雄がキャスターの「情報デスクToday」という番組でである。私はゲストとして時々呼ばれたのだが、アシスタント役の阿川は、秋元のそばで緊張して固まっていた。

 『俳句界』の2007年10月号の私との対談で、阿川はそのころのことをこう振り返っている。

 「当時、私は30歳でしたが、世の中のことをなんにもわかってなかったですから、ひたすら怖かったですね。家に帰れば父に怒鳴られ、職場では秋元さんに怒鳴られ、悲惨な生活を送っていました」

 読売新聞経済部の記者から転じた秋元に、この番組で私が、「家では粗大ゴミ扱いされる会長や相談役が、会社では威張れるので、いつまでもやめない」と言ったら、「家では粗大ゴミ、会社では生ゴミということだね。生ゴミは会社を腐らせるんだよ」とスパッと返されたのが忘れられない。

 『小説経団連』(講談社文庫)等の経済小説も書いている秋元を、私は骨のあるジャーナリストだと思ったが、当時の阿川は「ひたすら怖かった」らしい。

 会議でも番組でも、機嫌が悪くなると、秋元は机にボールペンを突いて、コツコツと音を立てた。その音だけで阿川は縮みあがったという。阿川やスタッフの取材不足に秋元はイライラしていたのである。

 番組が始まって1年後にアナウンサーの小島一慶が加わるようになり、阿川は小島にこう言われた。

 「秋元さんを避けちゃダメ。番組が終わったら、用事がなくても秋元さんの隣に座りなさい。お酌するとか、お茶に気を配るとかして、とにかくそばにいなさい」

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

「佐高 信の「一人一話」」

⇒バックナンバー一覧