参議院選挙は民主党の大敗に終わった。歴史的な政権交代からわずか10ヵ月で、有権者が新米与党に厳しい審判を下したのはなぜか。
国会は再び衆参でねじれた。民主党は、参議院で否決された法案を衆議院で再可決できる3分の2以上の多数を持たない。重要法案はことごとく暗礁に乗り上げ、国会運営は混迷を極めるだろう。当然、それは内閣の求心力を剥奪する。日本の政治の機能不全を、どう克服すればいいのか。
消費税に対するトラウマは一段と強くなり、年に1兆円以上増え続ける社会保障費の安定的財源すらメドがつかない。財政再建の道も遠くかすんでしまった。世界は、市場は、日本にどのような視線を送っているのか。
週刊ダイヤモンドの人気連載「政権〈史・私・四〉観」の4人の執筆陣が、日本政治の危機を徹底討論する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 遠藤典子)
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──今回の参議院選挙の最大の争点は何だったのか。菅直人首相が公示直前に消費増税について言及したことが、民主党大敗の原因か。
片山 ひと言でいえば、政党・政権への信頼度が問われた選挙だった。鳩山由紀夫前首相と小沢一郎前幹事長が「政治とカネ」などで大敗の素地をつくっていた。「小鳩」を切除することで国民の支持を一時回復したが、無神経な消費税の取り上げ方で再び信を失った。
田中 結局は菅政権の是非だったのではないか。消費増税そのものより、これについての菅氏の発言の仕方やそれに至る過程、その後の対応が主因だろう。
藤原 一般には民主党政権の実績評価だが、消費増税と、それをめぐる菅氏のブレがすべてとなってしまった。増税を口にすれば選挙に負けるという、宇野宗佑・橋本龍太郎政権の先例のとおりだ。菅氏はメディアへの登場回数を抑えながら、消費税に関する発言をメディアに追いかけられ、結局ブレを露呈したわけだから、橋本政権下の参院選にいちばん近い。
自民党も消費増税を掲げながら議席数を伸ばしたが、それはあくまで野党だったからだ。与党が増税を口にするインパクトは比較にならないほど大きかった。
フクシマ 10ヵ月間の民主党政治に対して、国民の厳しい審判が下されたということだ。2009年夏の衆議院選挙時点での高い期待に反し、民主党政権は期待はずれであり、自民党支配から大きな進歩はないと多数の有権者が性急に判断したということだろう。
消費増税は確かに大きな直接的要因だったと思う。増税派の政治家や政党が、選挙直前に増税を掲げ有権者の支持を得たようなケースは、過去にもまったく思い当たらない。菅氏がこのことを理解していなかったのは大失態だった。6月初旬には60%以上あった菅内閣の支持率は、1ヵ月で40%以下にまで下落してしまったのだから。