社員のプライベートに
とことん踏み込む理由

「部下の情報」を報告するときは、プライベートにまで踏み込みます。
多くの社長は、「社長や幹部が、部下のプライベートに踏み込んではいけない」と考えていますが、私はそうは思わない。社員同士の絆を強くするためにも、そして、社員を守るためにも、わが社では、過干渉にならない程度に踏み込んでいます。

 ですから、タクシーの中では、「社員Aが、結婚寸前まで行っていた相手と別れた。ほかの相手とつき合いそうだ」「社員Bが、消費税増税前に家を買おうとしている」「社員Cが奥さんとケンカをしている」といった、プライベート情報も報告させています。

「かばん持ち」の社長は、朝のお迎えから私に同行するので、私がどのような報告を受けているのか、どのように情報を聞いているのかを体験できます。

 株式会社高田魚市場(卸売市場・鮮魚販売/大分県)の桑原猛社長は、「タクシーの中で吸い上げた情報を、すぐに現場にフィードバックする点がすごい」と感想を述べています。

「小山さんはメモを取らず、うなずいているだけ。情報を浴びるように聞いていて、ときおり『ああしろ、こうしろ』と即決して終わりです。会社に到着したあと、タクシーの中で話題になった社員にすぐに声をかけますし、早朝勉強会のときに、『Aさんは、こうこうだから、こうするといい』とネタにすることもあります。名前が挙がった社員は、『何でそこまで知っているのか、どうして私の情報を持っているのか』とびっくりしていましたね。あれは、すごい。社員に関心がなければできないことです」(桑原社長)

 社員のプライベートを把握するといっても、社員の弱みやスキャンダラスな話に終始しているわけではありません。
 私が社員のプライベートに踏み込むのは、社員が今どのような問題を抱えているのか、どうして成績が上がらないのかを知ることで、社員の心の健康を守ることができるからです。

<著者プロフィール>
小山 昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/