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血圧測定をリアルタイムに近づければ
致命的な事態を回避できるようになる
――オムロンヘルスケア・荻野勲社長に聞く

大河原克行
【第58回】 2016年4月8日
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オムロンヘルスケアが、新たな事業コンセプト「脳・心血管疾病の発症ゼロ(イベントゼロ)」を打ち出した。血圧測定の頻度を高めることで、一人ひとりが血圧変動の傾向を知り、疾病リスクを把握することが、イベントゼロを実現するための基本的な考え方。それに向けた第1号製品として、2016年度内を目標に、簡便に血圧を測るための血圧計を開発する。だが、このコンセプトは、今後の同社の製品づくりや、事業の方向性を明確にするための重要な指針にもなりそうだ。「我々はこれからなにを作り、なにを市場に投入していくのか。その軸にあるのがイベントゼロになる」と、オムロンヘルスケアの荻野勲代表取締役社長は語る。イベントゼロの狙い、そしてオムロンヘルスケアの今後の方向性について聞いた。(取材・文/大河原克行)

荻野勲・オムロンヘルスケア代表取締役社長

――オムロンヘルスケアは、2016年1月に、新たな事業コンセプト「脳・心血管疾病の発症ゼロ(イベントゼロ)」を打ち出しました。この狙いはなんでしょうか。

荻野 私は、開発チームにこんなことを言っています。「我々は血圧計という製品を作っている。だが、製品というのは道具でしかない。血圧計を作ることによって、なにを実現したいのか。それをしっかりと考えてほしい」と。これは血圧計だけでなく、血糖計、体温計、体重体組成計、活動量計、そしてネブライザー(喘息用吸入器)でも同じです。

 たとえば、血糖値が高いことが原因で年間数万人の人が足を切断している。そうした人をゼロにするために、我々は血糖計を作っているわけです。また、喘息は、子供のうちに必ず完治させておくんだ、という気持ちでネブライザーを製品化しています。極端な言い方ですが、私は、「なんのためにその製品を作るのかということを明確にするまでは、商品企画をしてはいけない」と社内に徹底しました。そうしたなかで、血圧計のチームが目標として掲げたのが、「イベントをゼロにしたい」ということでした。

――イベントゼロとはどういうことを指すのですか。

荻野 日本人の死因は、1位ががんですが、2位は、心筋梗塞や狭心症などの心疾患、3位は脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患です。このうち、2位、3位の脳・心血管疾患に共通する原因として挙げられるのが高血圧です。いまだに高血圧に起因する、脳・心血管疾患が死因として上位を占めるとともに、死に直結しなくとも、イベントが発症すると、寝たきりや言語障害などが残り、健康寿命に大きな影響を与えることになります。

 かつて、血圧を測る目的は、エンドポイント(死)に至らないためのものと言われていましたが、いまではイベントを防ぐことが重要だと言われています。エンドポイントは悲しいことですが、イベントも、本人や家族にとって、悲しいものになることがある。イベントを防ぐことも大切な役割です。

 そこで、私たちの新たな挑戦として、「イベントゼロ」に取り組むことを打ち出したわけです。その具体的な製品の第1弾が、今年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2016」で参考展示を行った「超小型手首式血圧計」および「本体・カフ一体型上腕式血圧計」になります。

 超小型手首式血圧計は、時計のように手首に取り付けることで、場所を選ばずいつでも血圧が測ることができます。日常的に携行することが可能で、内蔵している各種センサーにより、1日の歩数や消費カロリー、睡眠の質なども計測できます。一方で、本体・カフ一体型上腕式血圧計は、本体と上腕部に巻き付けるカフ(腕帯)を一体化した製品です。いずれも、2016年度中の発売に向けて開発を進めているところです。

 これまでの血圧計は、1日に何度も測定するということには適していませんでした。そのため、1日の間にどんな血圧変化が起こっているのかもわかりませんでした。立ち上がった時やたばこを吸ったときに、急激な血圧変化が起こりますが、自分の血圧がそのときにどう変化するのかは、誰も知りません。新たな血圧計では、そうした変化を測定し、さらにその前後の動きの状況から、それが適正なものなのかを判断できます。たとえば、血圧が10高くても、それは階段を昇った後だからということが判断できるわけです。

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1965年東京都出身。 IT業界専門紙「BCN(ビジネス・コンピュータ・ニュース)」で編集長を経て、現在フリー。IT業界全般に幅広い取材、執筆活動を展開中。


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