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山崎元のマネー経済の歩き方

金銭損得の絶対感覚

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第139回】 2010年8月2日
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 筆者が総合商社の新入社員だった頃、飲み会の代金精算が独特な先輩社員がいた。彼は、自分が幹事の場合には、代金を早く集めて、店に対する支払いをぎりぎり先まで延ばし、逆に自分が料金を徴収される立場の場合、店への支払い期日を確認したうえで、幹事への支払いを後に引き延ばそうとする。「入金は早く、支払いは遅く」がビジネスの基本であり、商社の儲けは入金日と支払日の差によって生じる金利のような微妙なところに宿るのであり、日頃からこの感覚を養うことが肝心だ、というのがこの先輩の意見だった。

 新米財務部員であった筆者は、たとえば輸出の代金決済といった単純なプロセスのなかにも、郵便による書類送付の日数が過大な余裕を持って為替レートの計算に含まれていたり、銀行に資金が滞留しているあいだに十分な金利を付利してもらえずに顧客側が損をしたり、といった仕掛けが張り巡らされているのを知ることになったので、先輩の言わんとすることはよくわかった(注:人付き合いの方法としては不賛成だったが)。

 おカネの世界では、時間の経過に対して絶えず金利という値段が付いていて、これを意識しないと金利の水準や資金の日数で損をしうるという感覚は重要だ。たとえば、前もってこういう感覚があれば、同じ運用なら課税のタイミングが早くなるぶんだけ年1度の分配よりも損な毎月分配型のファンドを、購入したいと思う顧客はずいぶん減るのではないだろうか。

 近年、円の金利があまりに低いので、この種の損得に対する感覚が養われにくいかもしれない。しかし、外貨を絡ませると、金利水準が上がるので、同様のサヤ抜きがやりやすくなる。たとえば、プライベート・バンクに外貨建てで入金して、おカネの運用方針が決まるまでのあいだに十分な利息が付かずに、金利で稼がれているようなケースを目にすることもある。

 金銭損得の感覚としてもう一つ重要なのは、金融取引では取引相手が儲けている場合には、自分が損をしているという、損得のバランス感覚だろう。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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