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湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】

資金繰り窮し、駆け込んだ先は暴力団系金融
苦節経てコンテ業界1位。新事業で売上倍増

――アクア社長 原田弘良

湯谷昇羊 [経済ジャーナリスト]
【第13回】 2010年8月2日
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テレビコマーシャルを作成する前に、広告代理店はクライアントに対し、イメージが湧くように何コマかの絵コンテを用意する。アクアはそんな絵コンテを専門とする会社だ。社長の原田は、1991年、26歳でアクアを起業するも、資金繰りで塗炭の苦しみに喘ぐ。それを脱したと思ったら、今度は社員が全員辞めることになり、1998年に第2の創業を余儀なくされる。波瀾の人生の陰には、その都度、手を差しのべてくれた恩人がいた。

家庭の事情で3、4回転校
母を手伝い小学生から新聞配達

アクア原田弘良社長

 原田弘良は少年時代、3~4回も転校をしている。その理由が尋常ではない。父親は流しや雨どいなどを作る建築板金を自営でやっていた。その父親が酒乱で、母親に対し殴る、蹴るの、今で言うDV(ドメスティックバイオレンス)を繰り返していた。暴力に耐えかねて夜逃げした家族を、近所の人の良いおばさんが何度かかくまってくれた。

 しかし、そんな生活に愛想を尽かした母親は、その父親から逃げ出した。このため転校をしたのだ。「見つかっては、また逃げる」というので転校が多くなった。母親は子供たちを養うため、朝は新聞配達、昼は乳酸菌飲料の配達と、仕事を掛け持ちで頑張った。3人兄弟(妹二人)の長男だった原田は、そんな母親を見て小学生のときから新聞配達を手伝った。

 「自分の人生は自分で切り拓く」という気持ちはこの少年時代に自然に培われた。中学生になると、土日はスーパーマーケットでアルバイトをした。一浪して中央大学に入ったが、学費と1人暮らしの生活費は自分で稼いだ。奨学金を得ながら、学生起業をしたのである。

 高校時代の友人とパソコンソフトを作って、秋葉原の量販店に売り込みに行った。これが大ヒットして、参加した学生5~6人で分けても、1人年間300万円くらいになった。このほかにも、地方から受験した受験生に代わって合否の結果をみて電報を打つ「合格電報」のアルバイトなどもやった。

テレビ局に入社するも
わずか3年で退社

 学生の時に「マスコミ研究会」に入り、アルバイトに行っていた縁で、原田は東京キー局のテレビ局に就職する。入社すると、ニュースと天気予報ばかりずっと流している「文字放送」という全く新しい部署に、志願して行った。

 そこでは社長表彰まで貰うなど活躍した原田だったが、僅か3年で誰もが羨むテレビ局を退社してしまう。そのテレビ局では、約3000人もの社員が集まる全体会議が開かれたが、そこで部長クラスが社長に群がる大企業のヒエラルキーを目にし、「自分には合わない」と感じたのである。

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湯谷昇羊 [経済ジャーナリスト]

経済ジャーナリスト。鳥取市出身、1952年生まれ。法政大学経済学部卒業。1986年にダイヤモンド社入社、2004年週刊ダイヤモンド編集長。2007年営業局長兼論説委員、同年取締役。2008年同社退社。2000年に立命館大学客員教授として教鞭をとる。主な著書に、「迷走する銀行」、「生保危機の真実」、「会社再建」、「立石一真評伝 『できません』と云うな」(いずれもダイヤモンド社刊)、「サムライカード、世界へ」(文春新書)などがある。最新刊は『巨龍に挑む 中国の流通を変えたイトーヨーカ堂のサムライたち』(ダイヤモンド社刊)。


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