
「フォロワー10万人で単価が上がり、数十万人を超えると同世代の会社員より高年収になる」。人気イラストレーターのRellaさんが明かす収入の実態は、多くの人の想像を超えているのではないか。スマホゲーム市場の拡大や、新しいビジネスモデルの出現で、イラストレーターの稼ぎ方は激変している。しかし生成AIが台頭する今後も、イラストレーターの仕事は安泰なのか。また、絵の仕事で食べて行かれない美大卒業者はどうなるのか?美術評論家の沓名美和さんと人気イラストレーターのRellaさんが「美大のリアル」を率直に語る。(京都芸術大学客員教授、多摩美術大学客員教授 沓名美和、イラストレーター Rella、構成/ライター 石垣久美子)
せっかく美大を出ても、
イラストレーターで稼げなかったら?
――イラストレーターの働き方も多様で「イラストレーター=稼げない」というのは、今や間違ったイメージといえそうです(前回記事)。しかし、誰もが人気イラストレーターになれるわけではありません。美大を出ても絵の仕事に就ける人は、現実にはごくわずかなわけですが、一般の仕事に就いた場合、「美大で学んだことが無駄になってしまう」ということはないですか?
Rella:そういったご相談をいただくことがあります。でも実は、イラストのスキルって他の業界でも重宝されるんです。たとえば、雑誌やオンラインメディアの編集、UI/UXデザイナー、広告ビジュアル制作、商品パッケージデザイン、映像業界の絵コンテ、教育コンテンツの教材イラストなど。イラストの技法や審美眼を持っていると高い価値を出すことができます。
沓名:確かに、ビジュアルコミュニケーションに強いというのは、今の時代かなりの強みになりますね。
Rella:そうなんです。イラストレーターという肩書がなくても、イラスト的な感覚が求められる場面は意外と多いんです。これも、私が実際にいろいろな企業の方とお仕事をご一緒して実感したことです。
しかも美大ではイラストだけでなく、美術史や映像など、アートに関わる様々な分野を学ぶことができます。私の在学中の専攻はファッションデザインでしたが、幅広く学びました。途中で進路を間違えたかなと思いましたが、今では衣装デザインの仕事も多くいただいており、その経験が仕事に役立っています。

沓名:専門学校が好きなものだけ選べるバイキングだとしたら、美大はコース料理のレストランみたいだと思います。好きなことも嫌いなことも、関心のない分野のことも、まずは系統立てて勉強しなければならない。でも、だからこそ、自分でも気づかなかった新しい興味に出合えたり、思いがけない得意分野を見つけたりする可能性が広がっています。
今はリスキリング、リカレントのムードも高まっていますし、社会人になってから学び直す人も増えました。専門学校、美大ともに一長一短。さまざまな業界でデジタル化が進む中で、イラストの持つ「ビジュアルで伝える力」はこれからさらに重宝されるスキルになっていくと思います。