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「パナマ文書」騒動が水を差す
反腐敗運動への中国庶民の期待感

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第202回】 2016年4月8日
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地方都市でも、数年前までは高級料理での接待漬けが当たり前だった

 パナマの法律事務所で作成されたタックスヘイブン(租税回避地)関連文書に、習近平国家主席の親族の名前が発覚したことが物議を醸している。反腐敗を政権の錦の御旗に掲げてきた習近平自身が“腐敗していた可能性”が出てきたからだ。

 もともと習近平政権の支持をめぐっては、中国でその賛否は大きく分かれていた。エリート層は毛沢東路線を彷彿とさせる政治闘争や言論の統制を理由に批判的だが、官僚の腐敗撲滅の大鉈を振るったという点では、庶民のウケはかなりよかったのだ。

 この一件で習政権への民衆の支持は相当落ち込むかもしれない。反腐敗運動そのものが失速する可能性もある。だがその一方で、反腐敗運動は地方都市で支持を得ており、むしろ期待感が高まっている一面を見逃すことはできない。

 政権支持のカギを握るのは「改革の実現」である。海外メディアは否定的だが、中国の一部の人々の間には「改革は目に見えて進んでいる」という評価が存在するのだ。地方政府における“下級役人”たちの眼には少なくともそう映っているようだ。

接待漬けの日常は去り
今はもっぱら20元の食堂

 地方でも熱が入る反腐敗運動だが、地方政府の内部ではいったいどんな変化が起きているのだろうか。筆者は沿海部のX市の政府機関に勤務する男性・王偉さん(仮名)と面会した。

 四級都市に分類される300万人のX市は、町工場と田畑だけの地味な地方都市だ。けれども、街の中心部を占拠するのはそれとは不釣り合いな高級マンション群、この街もつい数年前まではバブル経済の真っただ中にあったのだ。ステーキハウスやワインショップの数の多さからも、接待漬けの享楽三昧が当たり前の日常になっていたことが伺える。そんなX市も今では反腐敗運動に力が入る。

 反腐敗運動がもたらした最も大きな変化とは何だろう。王さんに尋ねると、間髪入れずしてこんなコメントが返ってきた。

 「接待がなくなったことです。今では食事はもっぱら食堂で食べています」

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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