住宅ローンの借り換え件数が急増している。金利負担が減るメリットを考えれば、個人は借り換え手数料と比較しながら検討してもいいだろう。こうしたコストカットは誰もが思いつきそうなことだ。
しかし、個人が備えなければならないことは、不動産市場の変化に対する中長期的なリスク管理だと、広い視野で捉えた方がいい。すでに不動産価格はかなり上昇したので、遠くない将来、下げ相場がやってくることになる。そうしたリスクに備えるためには、借り換えはしても繰り上げ返済はしない方がいいだろう。なぜそうなのかは後述するとして、この機会に「不動産価格が下がる前にやっておくべきこと」を整理しておこう。今検討すべき対策は5つある。それらは「一生もの」の決断になると思う。
不動産価格は
上昇サイクルの最終局面にある
5つの対策を提示する前に、不動産市場の現状を把握しておかなければならない。21世紀になって不動産投資信託の市場整備が行われ、新たな投資市場ができた。J-REITはその代表格である。不動産投資は小口投資が可能になり、資金流入が起こった。同時に、不動産の価値評価も大きく変化した。収益を生む不動産は賃料を割り戻す形で評価され、安定した賃料に対して不動産価格が上昇・下降のサイクルを持つようになった。
不動産価格が行き過ぎることなくサイクリック(周期的)に動く中、現在は高騰の最終局面に近づいている状況にある。アベノミクスの1つである金融緩和により、行き場を求めるお金は担保が取れる不動産に流れやすくなり、資産インフレを起こし始めた。そこには明確な因果関係がある。以下のグラフは不動産への資金流入量とマンション価格の相関を示している。
しかし、金融緩和開始から3年が経過し、足もとでは金利低下はすれども株高・円安・インフレに結びつかなくなり始めている。不動産価格の上昇も先行きが怪しくなり、これまでの一本調子の上げ相場は変調を来たしている(連載第14回「徹底検証!マンション価格の潮目はこう変わった」参照)。そんななか、銀行はマイナス金利に乗じて、「収益不動産を購入するなら融資します」という積極融資姿勢になっている。それに対してデジャブのように、「待てよ、これはいつか通った道だ」と気づく人も出てくるだろう。そう、そろそろトランプで言う「ババ抜き」の最終局面に近いと言えるのだ。不動産価格が下落を始めたときに、ババを持っている人はゲームに負けてしまうのである。それは持ち家である自宅も例外ではない。