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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

「忘れられる権利」ガイドラインが実践運用へ

ネット被害救済への期待と付随する問題点

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第7回】 2016年4月15日
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意思に反した個人情報の拡散、特定個人への誹謗中傷など、ネット社会特有の問題が多発する韓国。不要となった個人情報や悪意ある書き込みを消去する「忘れられる権利」の在り方に関し、このほど行政が動きを見せた。インターネット投稿へのアクセス排除を要請する際の手続きに関する「ガイドライン」の運用が始まるという。

「忘れられる権利」を想定
ネット業界のガイドライン

 韓国放送通信委員会(注)は今月、「インターネット自己掲示物アクセス排除要請権ガイドライン」を策定し、5月から施行すると発表した。 

Fotolia_104118881全く気付かないうちに知られたくない情報が……どうしたら削除できるの!?
※写真はイメージ Fotolia_104118881

 インターネット上で起こる望まざる個人情報の拡散や誹謗中傷、風説の流布などに歯止めを掛けるため、「忘れられる権利」を認めようという議論が、2014年5月のEU司法裁判所の判決などを背景に韓国でも高まりを見せていた。

 そんな中で、自身の投稿や個人情報の削除要求を行いやすくする旨を記したのが、この「ガイドライン」だ。

 たとえ自分の書き込みを削除しても、グーグルをはじめとする検索サイトには、投稿がキャッシュとして残り続ける。

 また、ソーシャルメディアなら退会することで書き込みを削除できるが、オンラインコミュニティサイトの場合は、退会しても自分の書き込みに他のユーザーがコメントを書き込んだ場合は削除できないルールがあるなど、そう簡単にネット上の履歴を消すことはできない。

 世界的に見ても極めて高い割合で、インターネットが社会のあらゆる場面に浸透している韓国では、その利便性を享受してきた反面、ネット社会特有の闇の側面に苦渋をなめた経緯があることは、第2回でもお話しした通りだ。


注 韓国放送通信委員会:放送・通信、周波数の研究・管理とそれに関連する各種政策を決める、2008年設立の大統領直属機関

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趙 章恩 [ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。


コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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