小さい山を登れない人に
大きなチャレンジなど訪れない

入社1年目の「単純作業」のこなし方/経済ジャーナリスト・木暮太一<後編>新人のうちは、とにかく早くつまらない仕事をやり切って、次の仕事をもらいに行く。小さな山をいかに的確に素早く登れるかを見せるべきだ。

 

岩瀬 最後、3点目は「つまらない仕事はない」です。

  本を書いてて楽しくてたまらないとか、音楽好きな人が音楽に携われて幸せだとか、美容師さんがスタイリングするのが好きだといったことはあると思うのです。一方、会社員の仕事は、企画、営業、事務、などありますが、結局どの会社もたいして変わらないのではないかと思っています。あとは、いかに自分が面白くできるかどうかだけの違いだと思います。

  例えば、楽天の三木谷浩史さんは、入社1年目にバックオフィスでひたすらコピーをとる仕事を任されたときにも、いろいろと工夫を凝らしてコピーしたのだそうです。

木暮 まさにそのとおりだと思います。さすがに1年間コピーとりをして楽しいと思えるかは自信ないですけれど、結局のところ「その仕事が必要だから存在している」わけですから。それを「作業」にするか「仕事」にするかは、自分次第なんですよね。

  僕の場合は、本当につまらないものをやらされたら、さっさと終らせて次の仕事をもらいにいきます。小さな山を登れない人に、大きなチャレンジは訪れません。小さな山をいかに的確に素早く登れるかを見せるべきですね。

岩瀬 あとは、つまらない仕事と面白い仕事のバランスをはき違えてるというケースもあるかもしれませんね。

  例えば、生命保険会社は約40社あるのですが、全社のPL(損益計算書)を、僕が自分で入力することがあります。「そんなこと、社長がやらないでください」と周囲に言われるのですが、自分で入力することで見えてくるものがあります。
「あの会社ってこれほど規模が大きかったんだとか、こういう収益なんだ」とか。手を動かし体を動かすことで得られるビジネスインサイトは大いにあると思うのです。

  単純作業で誰でもやれることと思うのか、これには作業以上の付加価値があると考えるか。仕事の本質を考える上で、大事な発想だと思います。

木暮 その感覚すごくわかります。僕もアダム・スミスの本(『いまこそアダム・スミスの話をしよう~目指すべき幸福と道徳と経済学~』)を書いたときに、膨大な資料の中から自分が重要だと思ってアンダーラインをひいた箇所、約5万字を「写経」したんですよ。

岩瀬 それはすごい。アダム・スミスの「いたこ」になりそうですね(笑)。

木暮手を動かして書き写すことで、彼の思想がインプットされるんですよね。それはただ読んでいるだけでは気づかないないことがたくさんあって。数年たつ今でも、その部分を暗唱できたりするんですよね。数年前に読んだ本なんて、普通覚えてないですよ。それと同じことかなと思います。

岩瀬 その仕事の「付加価値」を考えながら手を動かす。大いに共感できるお話でした。


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