闇株新聞[2018年]

セブンイレブンの「育ての親」、鈴木敏文氏が引退したセブン&アイへの2つの懸念闇株新聞が考察する「セブン&アイ」の内部抗争

2016年4月21日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

セブン&アイ・ホールディングスを長年率いてきた鈴木敏文会長が、突然の引退を表明してから2週間。日本を代表する小売りの勝ち組が、揺れています。いったい何があったのか、そして同社はこれからどうなってしまうのか!? 経済のプロも愛読する刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」が解説します。

 4月7日、セブン&アイ・ホールディングス(証券コード:3382 [⇒最新の株価はコチラ] 以下、セブン&アイ)の鈴木敏文・代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)が突然に引退を表明しました。鈴木氏と言えば、同社の中核事業であるセブンイレブンの「育ての親」であり「完全なるグループの支配者」だったはずです。

 その鈴木氏が何故突然に引退を発表したのか? 巷間囁かれるのは業績低迷を理由に更迭されそうになった井阪隆一氏(セブンイレブン・ジャパン社長)を中心に「反鈴木グループ」が形成され、創業者の伊藤雅俊氏やアクティビストのサード・ポイントとも連携しながら、鈴木氏と次男の鈴木康弘取締役の追い落としを図った「クーデター」だったということです。

 そこで懸念されることが2つあります。1つは「サード・ポイント」の存在と役割、もう1つは「指名報酬委員会」の破壊力についてです。

早くから人事抗争について知っていた
サード・ポイントとは何者なのか!?

 ダニエル・ローブ氏率いるサード・ポイントは2015年7~9月にセブン&アイの株式を取得したようで、同年10月には業績が低迷するイトーヨーカ堂をセブン&アイから切り離して大幅増配することや、米セブンイレブンの米国での分離上場などを要求していたようです。

 この手のヘッジファンドは株式を海外の証券会社からデリバティブを相対で取得するなどして、短期的な値上がり益を追求するスタイルです。この場合、対抗手段としては「のらりくらりと時間稼ぎ」をすることです。時間が経つほどコストが嵩み、負担に耐えられなくなって勝手に撤退していくからです。

 ところがローブ氏は3月27日にセブン&アイに書簡を送り「我々サード・ポイントは井阪氏が最有力候補であるべきと考える」と指摘していたようです。これはアクティビストの発言とは思えないほど「稚拙」です。そもそも外部の株主が(その後に露呈する)人事抗争について知っている方がおかしいのです。

 サード・ポイントのセブン&アイ株取得コストは5400~5500円と推測されます。本年3月下旬には株価が4800円台まで下落して焦ったローブ氏と、反鈴木グループが「通じていた」と簡単に想像できてしまいます。

 だからこそ、鈴木氏があっさり引退してしまったことに「大変に嫌な感じ」がするのです。鈴木氏は自身が手掛けてきた事業に「もうそれほど伸びシロがない」と肌で感じていたのではないでしょうか。

強大な権限を持つ「指名報酬委員会」
他企業でも起こり得る“懸念”とは?

 「指名報酬員会」についてはセブン&アイに止まらない問題です。実は今回の騒動、取締役会に先立って「指名報酬委員会」が鈴木氏の人事案(井阪社長を更迭など)を否決していたようです。

 「指名報酬委員会」とは、代表取締役、取締役、監査役、執行役員の指名や報酬について社外取締役を含む「委員会」が決定するシステムで、従来の株式会社とは異なる新しい企業統治形態として採用する企業が増えています。

 セブン&アイの指名報酬委員会は3月8日に設置されたばかり。委員長を含む2名の社外独立取締役と鈴木・村田紀敏(セブン&アイCOO)両氏の計4名で構成されています。

 この委員会は見れば見る程強大な人事権限を有しています。というのも、決定には過半数(つまり4名中3名)の賛成が必要となるため、少なくとも2名の社外取締役が賛成しないと人事案が一切認められないのです。

 最近はコンプアライアンス重視の流れもあり、どの企業も社外取締役を最低1~2名は選任するよう指導を受けます。が、実態は「肩書きが立派でいかにも経営を厳しく監視しそうに見えて、その実あまり煩いことを言わない人材」が重宝されひっぱりダコになっています。

 普通、上場会社を外部から支配するためには莫大な資金を使い発行株式の過半数を握るか、大株主や一般株主の賛同を得て取締役会の過半数を握らなければなりませんが、ここに「社外取締役を若干名だけ送り込んで指名報酬委員会メンバーに就けばよい」という、金も要らない大変に簡単な方法が新たに加わったことになります。

 社外取締役候補を操り、これを悪用する勢力が(別に反社会勢力とは特定しませんが)、たくさん出てこないことを祈るしかありません。

カリスマ経営者が去った
セブン&アイはこれからどうなる?

 さて、今後のセブン&アイはどうなっていくでしょう。取締役会は4月19日、井阪氏を社長に昇格する人事を決定しました。鈴木敏文氏はすべての役職を解かれ「名誉顧問」に就任する方向で調整を進めるとされていますが、事の次第から一切の関係が断たれる気がします。

 こう言ってはなんですが、セブン&アイはもともとセブンイレブン以外は「ガラクタ」ばかりの企業です。それをまとめ上げここまでに業容と株主価値を拡大させてきたのは、鈴木氏の経営手腕に拠るところが大であったのは間違いありません。

 新社長である井阪氏は野村證券・元副社長の井阪健一氏のご子息ですが、1980年にセブンイレブン・ジャパンに入社、2009年から同社の代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任した「初の生え抜き社長」でもありました。

 手腕は未知数ですが、煩く言う実力経営者がいなくなった後のサラリーマン経営者は、得てして途端に緊張感がなくなり、新たな抗争に現を抜かして業績拡大などどうでもよくなってしまうものです。井阪氏がそうであるとは言いませんが、セブンの成長神話と一人勝ち状態は鈴木氏の引退と共に急速に終焉を迎えるような気がします。

「闇株新聞プレミアム」には人気コンテンツの1つに「今後の株式市場の勝ち組・負け組を考える」というコーナーがあります。発表された決算を独自の視点から分析し、取り上げる企業の今後について考察する内容ですが、セブン&アイについてもそちらで引き続き追って行くことになりそうです。

金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」では、読者から寄せられる「この企業を取り上げて欲しい」というリクエストにもできる限り答えています。目先の株価の上がった下がったではなく、国内外の政治・経済の状況や、市場の潮流、経営者の手腕、株主のパワーバランスなどを多角的に見て「これからどうなるか」を考える投資にご興味のある方は、ぜひ購読をご検討ください。

闇株新聞PREMIUM

闇株新聞PREMIUM
【発行周期】 毎週月曜日・ほか随時  【価格】 2,552円/月(税込)
闇株新聞PREMIUM 闇株新聞
週刊「闇株新聞」よりもさらに濃密な見解を毎週月曜日にお届けします。ニュースでは教えてくれない世界経済の見解、世間を騒がせている事件の裏側など闇株新聞にしか書けないネタが満載。
お試しはコチラ

 

DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

●DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)とは?

金融・経済・ビジネス・投資に役立つタイムリーかつ有益な情報からブログに書けないディープな話まで、多彩な執筆陣がお届けする有料メールマガジンサービス。
初めての方は、購読後20日間無料! 


世の中の仕組みと人生のデザイン
【発行周期】 隔週木曜日  【価格】 864円/月(税込)
世の中の仕組みと人生のデザイン 橘 玲
金融、資産運用などに詳しい作家・橘玲氏が金融市場を含めた「世の中の仕組み」の中で、いかに楽しく(賢く)生きるか(人生のデザイン)をメルマガで伝えます。
お試しはコチラ

堀江 貴文のブログでは言えない話
【発行周期】 毎週月曜日、水曜、ほか随時  【価格】 864円/月(税込)
堀江 貴文のブログでは言えない話 堀江 貴文
巷ではホリエモンなんて呼ばれています。無料の媒体では書けない、とっておきの情報を書いていこうと思っています。メルマガ内公開で質問にも答えます。
お試しはコチラ

 


太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

「株」全予測
人気株500激辛診断
優待年末年始

2月号12月20日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[「株」全予測/人気株500激辛診断]
◎新春特別企画
2024年に儲けた株&損した株も大公開!
桐谷さんのゆく年くる年

2025年も全力優待ライフ
◎第1特集
2年目NISAの必勝法!
112人のプロに聞いた!
2025年「株」全予測&儲け方

●日経平均は5万円へ!日本株の高値・安値予測
●生成AIブームも半導体は苦戦!
上がる株・下がる株
●国内利上げで銀行・金融が有望!
上がる業種&テーマ
●中央銀行の買いが継続!金(ゴールド)
●トランプ政権下でも下落傾向!原油
●ドル円は年後半に140円台に!為替
●オルカンの次に買う1本も!投資信託

◎第2特集
買っていい10万円株は97銘柄!
<2025新春>人気の株500+
Jリート14激辛診断

●投資判断に異変アリ!
買いに躍進!》トヨタ自動車、ホンダ…など
強気に転換!》ソニーグループ…など
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
通期で上ブレ期待/AI関連で恩恵他
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
PBRが低く改善に期待の株/アナリストが強気な株/配当利回りが高い株
●2025年新春のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株/新興株/Jリート

【別冊付録】
増益割安株は1178銘柄
上場全3916社の最新理論株価

◎第3特集
トランプ政権下でどうなる!?
人気の米国株150診断
●S&P500指数をプロが大予測

●Big8を定点観測!GAFAM+αを分析!
●買いのオススメ株
トランプ株/高配当株
●人気の124銘柄を徹底診断
ナスダック/ニューヨーク証券取引所

◎第4特集
ザイクラブ拡大版!2024年はどうだった?
ザイ読者の悲喜こもごも&2025年の投資戦略
ザイ編集部員のプチ反省&自慢大会も!


◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報