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あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
【第5回】 2016年4月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
野口真人 [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

オークションは確実に損する

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「モノの価値は市場の総意で決まる」という考え方には、ある種の欠陥がある。それが最も顕著な形で現れるのが、オークションである。また、マーケットでの取引事例が少ないものの価値は、どのように考えればいいだろうか? たとえばパンダは? たとえば会社は?

年間500件以上の企業価値評価を手がけるファイナンスのプロ・野口真人氏の新著『あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門』のなかから紹介していこう。

絶対に損するお買い物、その名もオークション

前回確認したところでは、「モノの価値は市場の総意で決まる」という考え方には、どうやら欠陥がありそうだということだった。この考え方を価値評価のマーケット・アプローチと呼ぶ。

オークションでの値づけというのは、ある意味では、このマーケット・アプローチの延長線上にある。

 「あのアイドルのチケットにみんなは3万円を出していいと考えて入札している。でも、自分はどうしてもチケットを手に入れたいから、3万2000円を出すぞ!」などと考えるわけである。

冷静に考えればわかることだが、これはちょっとおかしな話だ。最終的にあなたがそのチケットを落札できたのだとしたら、あなた以外のすべての市場参加者は「いやいや、そんな大金を出すほどの価値はないよ……」と考えているからだ。

つまり、オークションの落札者はつねに、みんなが考える適正価格よりも割高な買い物をしていることになる。言い換えれば、オークション出品者は合法的に「世界一の高値づかみ」をさせることに成功しているのだ。

このように、取引事例をもとに決まる市場価格は、現実の価値から大きく乖離することがある。その最たるものがバブルだ。5000万円の価値しかないマンションが、いつのまにか値上がりを続け、1億円とか2億円で取引されるようになるのは、人々が市場の取引価格だけを見るからである。

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野口真人(のぐち・まひと) [プルータス・コンサルティング代表取締役社長/企業価値評価のスペシャリスト]

1984年、京都大学経済学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。1989年、JPモルガン・チェース銀行を経て、ゴールドマン・サックス証券の外国為替部部長に就任。「ユーロマネー」誌の顧客投票において3年連続「最優秀デリバティブセールス」に選ばれる。

2004年、企業価値評価の専門機関であるプルータス・コンサルティングを設立。年間500件以上の評価を手がける日本最大の企業価値評価機関に育てる。2014年・2015年上期M&Aアドバイザリーランキングでは、独立系機関として最高位を獲得するなど、業界からの評価も高い。これまでの評価実績件数は2500件以上にものぼる。カネボウ事件の鑑定人、ソフトバンクとイー・アクセスの統合、カルチュア・コンビニエンス・クラブのMBO、トヨタ自動車の優先株式の公正価値評価など、市場の注目を集めた案件も多数。

また、グロービス経営大学院で10年以上にわたり「ファイナンス基礎」講座の教鞭をとるほか、ソフトバンクユニバーシティでも講義を担当。目からウロコの事例を交えたわかりやすい語り口に定評がある。

著書に『私はいくら?』(サンマーク出版)、『お金はサルを進化させたか』『パンダをいくらで買いますか?』(日経BP社)、『ストック・オプション会計と評価の実務』(共著、税務研究会出版局)、『企業価値評価の実務Q&A』(共著、中央経済社)など。


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