バブル全盛期には企業による豪華な新卒内定者接待が横行していたという。その後の不景気が長すぎたこともあり、もはや都市伝説と化した新卒内定者研修だが、ここ数年の景気の回復とともに、再び復活しているという。その真偽を調査すべく今年の新社会人や現役学生たちに話を聞いた。
バブル期ほどの豪華さには欠けるが
懇親という名目での食事接待は復活
バブル期と呼ばれる1980年代後半から1990年代初頭の就活シーンは超売り手市場だっため、複数企業の内定を得る就活生も多かった。
学生を他社に取られたくない企業は、「OB訪問しただけで寿司をごちそうになった」「内定者懇親会は高級ホテルにタダで宿泊して、フレンチのフルコースをごちそうになった」「交通費全額支給は当たり前。新幹線代とホテル代で10万円もらった」「他の会社と接触しないように、就職解禁日には研修旅行でハワイに行った」など、いまや都市伝説ではないかと思うような豪華な内定者接待を行っていた。
バブル崩壊後は就活市場が冷え込んだこともあり、鳴りを潜めていた内定者接待だが、景気の回復もあり一部企業で復活。ここ数年は、優秀な学生を他社に取られないように、内定者懇親会を高級レストランで行う一流企業もあるという。
また中小企業でも、「内定者セミナーの後に高級居酒屋でごちそうしてもらいました。懇親のための食事会だと思っていたけど、今、思えば内定辞退させないための接待だったかも」と後々思いあたる内定者もいる。
実際の就職活動のデータを見ると、2015年度は大卒有効求人倍率が前年1.28倍から1.64倍へと大幅にアップし、売り手市場へと転換したとされている。また、16年度は1.73倍へとさらに上昇し、学生売り手市場の傾向は今年も継続している。
新卒の就職難の時代が終わりつつあることは、15年に実際に就職活動をした人も実感しているようだ。
都内女子大卒でシステムエンジニアとして就職が決まったA子さんは「女子大ですが、就活中に周りで苦労しているという話はほとんど聞きませんでした。私もエントリーシートを出した会社は20社くらい。そのうち、1社から内定をもらい、そこに就職を決めました。業種や職種を選ばなければ、仕事ってあるんだなと思いました」と自らの就職活動を振り返る。
学生売り手市場は都内限定ではない。地方公立大学卒のB子さんも「有名大学ではないので、大手企業に内定という話は聞きませんが、気がついたら県内の中小企業から内定をもらっている人がほとんどでした。私はもともとエンターテインメント業界志望だったので、なかなか内定をもらえませんでしたが、ギリギリでIT企業のシステムエンジニアに決まりました。サークルに入っていなかったので、先輩とのつながりもなかったし、デザイン学部という特殊な学部だったので、就職活動はかなり下手だったと思います。同期の子の話を聞くと、きちんと企業研究をして、早い時期に内定をもらっていたので上手に就職活動していたんだなと思いました」と、やや苦労した就活エピソードを教えてくれた。