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岸博幸のクリエイティブ国富論

円高だけが問題なのか?

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第101回】 2010年8月13日
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 ここに来て徐々に円高が進行し、更なる円高の進行と景気の先行きを懸念する声が高まっています。しかし、そうした認識は正しいのでしょうか。

円高が騒がれる前から景気は悪い

 日経新聞を中心とする最近の新聞の報道には違和感を感じざるを得ません。トーンとしてはだいたい「徐々に景気が回復傾向にあるのに、円高の進行でその足が引っ張られかねない。政府は円高への対応をすべき」という感じですが、これほど偏った見方はないように思えます。

 そもそも、円高が進み出す前から景気は悪いのです。東京などの大都市圏や大企業については、中国特需やエコポイントなどの景気対策の恩恵で多少は良くなっているのは事実ですが、地方の景気はかなり深刻です。私は講演で地方に行くことが多いのですが、地元の企業経営者の方々のお話を伺うと、日本の北か南かの区別なく、一様に同じような状況を聞かされます。

 未だに多くの地方の基幹産業は建設業と農業ですが、建設業については、公共事業予算の減少もあり、だいたい5年で売上は半減しています。中小企業の業績は悪いままです。昨年9月の政権交代以降も、地方の雇用は増えていません。それらを反映し、タクシーの運転手さんに話を聞くと、どこの地方でも夜の街はさびれる一方のようです。

 地方は元々そうした深刻な状況にあるからこそ、8月7日に公表された内閣府の「国民生活に関する世論調査」でも、政府への要望として“景気対策”を挙げた人が69%余りと、昨年より約7ポイント上昇し、昭和53年以降でもっとも高くなったのではないでしょうか。

 よく考えると、昨年は景気低迷の原因としてリーマン・ショックの影響ばかりが喧伝されました。そして今回は円高の影響が騒がれています。このように、どうも景気への懸念の材料としては海外要因ばかりが強調される傾向にありますが、明らかにおかしいと言わざるを得ません。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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