燃費データの改ざんなどの不正が発覚し、3度目の経営危機に陥った三菱自動車。国内受注が半減するなど世間の風当たりが厳しさを増している。そんな中、鉄の結束を誇る三菱3社が水面下で救済に向けて動き始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
三菱トップ4社会──。三菱商事出身の益子修・三菱自動車会長兼CEO(最高経営責任者)が再建請負人として三菱自社長に就いた2005年から、10年以上にわたって続けられてきた会合がある。
この定例会では、三菱商事社長、三菱東京UFJ銀行頭取、三菱重工業社長の三菱グループ3社首脳に益子会長を加えた4人が、3カ月に1度のペースで顔をそろえる。益子会長(当初は社長)が三菱自の再建の進捗を報告する場として発足し、近年は三菱グループの情報交換の場も兼ねていた。
「この定例会が存在すること自体が、三菱グループにとって三菱自の問題が永遠のテーマであることの証左だ」。ある三菱重工幹部はそう表現する。
4月20日、三菱自による燃費データの不正問題が発覚した。三菱3社の首脳が一堂に会する機会は連休明けに持ち越されたが、水面下では、幹部クラスによる話し合いの場が持たれている。
三菱自の不正の全容解明はこれからだ。燃費審査に必要なデータを意図的に改ざんしたり、国が定める方法と異なる方法で燃費を測定したりしていた。
かねて、自動車業界では、カタログ燃費と実燃費との乖離が大き過ぎることが問題視されていた。燃料タンクを小さくしたり、安全装備品を外したりして軽量化するなど、自動車メーカーはあの手この手で苛烈な燃費競争を乗り切ろうとしてきた。今後、燃費の審査方法やその運用をめぐって、問題が他の自動車メーカーへ発展するリスクは否定できない。
とはいえ、三菱自による不正は、道路運送車両法を逸脱する違法行為に当たるとされている。三菱自は、2000年、04年と2度にわたってリコール(回収・無償修理)隠しを行った前科2犯である。
「3度目の不正を世間も政治も行政も許してくれるはずはなく、益子会長、相川哲郎社長兼COO(最高執行責任者)ら経営上層部の一掃は避けられない」(複数の三菱グループ幹部)情勢だ。