トレンダーズ(株)代表を退任後、(株)カラーズを立ち上げ、ベビーシッターサービス「キッズライン」を運営する経沢香保子さん。新刊『すべての女は、自由である。』の発売を記念して、サッカーコメンテーターでタレントの前園真聖さんとの対談が行われた。前園さんの人気著作『第二の人生』(幻冬舎)『すべての女は、自由である。』から引用した言葉をもとに語り合っていただいた。(構成:池田園子 撮影・小原孝博)

どんなときでも「保険」になるのはお金

僕、前園真聖が自立した女性を好きな理由前園真聖 (まえぞの・まさきよ)1973年鹿児島県生まれ。92年、鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年、日本代表U-23主将としてアトランタオリンピックに出場、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などを演出。その後、ヴェルディ川崎、サントスFC、仁川ユナイテッドFCなど、国内外のチームを渡り歩き、2005年現役引退を表明。現在はサッカー解説やメディア出演のほか、「ZONOZONOサッカースクール」を主催し、子どもたちへのサッカーの普及活動などで活躍。

 経沢 前園さん、今日はお忙しいところ、ありがとうございます。以前、テレビ番組でご一緒したときに、1973年生まれで同い年だと知って、親近感がわいて。3月に発売された『第二の人生』も買って拝読しました。

 前園 ありがとうございます。ぼくも『すべての女は、自由である。』を読ませていただきました。一番びっくりしたのは、経沢さんが「1億円あったら、女は自由になれる?」と小学4年生のときに、仮説を立てていたこと(笑)。同じ頃、ぼくも小4だったわけですけれど、そんなこと考えつきもしませんでしたよ。どうしてそういう発想を持つようになったんですか?

経沢 厳しい父と専業主婦の母との間に生まれ、父の言うことは絶対でした。でも、あるとき母が「これからは女性が働く時代になる」と言ったんです。私は自分たち一家の状況しか知らないので、父=家事・育児ではなく、仕事をメインにする役割、と考えていました。その上で、母が働くにはどうすればいいんだろう? と考えて。結婚して、出産して、家のこともやって、さらに仕事もする――そこで必要なのはと考えた苦肉の策です。

前園 小学生で、そんなことを……。

経沢 変わった小学生ですよね(笑)。たとえば、金利収入で生活できたら、万が一のときに何とかなるのではと。

前園 さすがですよ。

経沢 会社をクビになっても旦那さんに捨てられても、シングルマザーになっても、何とか生きていける自分でいたかった。

前園 だから、1社目のときに上場を目指して、それを見事に達成されたんでしょうね。

経沢 会社に100億円貯めれば、極端な話、万一売上がゼロになっても、社員100人で◯年まで経営し続けられる……みたいな計算はしていました。

前園 経営者として不安を解消する目的があったんですね。でも、上場するのって、そういった現実的な理由だけじゃなく、経沢さんの長年の夢でもあったんですよね。

経沢 そうですね。いま、思うと恥ずかしいのですが、自社を「一流の会社にしたい」という気持ちが強かったです。あと、女性経営者が創業し上場をするというパターンが少なくて、「経沢さんが出来るなら私もしたい」という前例になれば、もっと女性リーダーが増えるかなとは思いました。日本の企業は400万社あり、うち上場企業は4000社に満たない。さらに女性社長(代表執行役を含む)の上場企業は29社(東京商工リサーチ調べ、2014年12月時点)しかいない。しかも、その中でも、同族などではなく、ゼロから創業し上場した女性経営者は、たぶん半分もいないと思うんですよね。

前園 そのうちのひとりに加われば、認めてもらえるだろう、と考えたわけですね。

経沢 ええ。ただ「とにかく上場しなくては」と視野が狭くなった時期もありました。「会社の在り方」も大事ですが「お客様に何を提供するのか」も大事だったなと、学んだことは多かったと思います。