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長内 厚のエレキの深層

マツダにできて三菱自工にできなかったこと

長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]
【第8回】 2016年5月18日
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開発の現場から夢を奪った
三菱自工不正の真の問題点

かつての「ラリーの三菱」のブランドイメージを、身の丈に合った投資で生かせなかったのはなぜか

 三菱自動車工業(以下、三菱自工)の燃費不正問題では、企業体質や現場のモラルなど様々な要因が取り沙汰されているが、一番の問題は三菱という大看板と、三菱自工という中小自動車メーカーの実態とのギャップが、開発の現場に無茶を押しつける一方で、夢を奪い取ったところにあるだろう。

 図に示したのは、2015年の1年間の国内自動車登録台数を基にした乗用車(普通乗用車+軽自動車)の市場シェアである。レクサスがトヨタの1ブランドであると考えれば、事実上国内最下位のメーカーである。しかし、現在の益子会長が三菱商事から三菱自工の社長として送り込まれてきた当初、ランサーエボリューションなどラリーに強い三菱を代表する乗用車を含め、多くの車種の開発販売を中止し、モデル数を絞り込む一方で、日産との軽自動車の共同開発(日産は主に調達を担当していたので、事実上三菱単独での開発生産)や、将来を見据えた電気自動車の開発など、積極的な技術開発を主導していた。

出典:日本自動車工業会統計資料をもとに筆者作成

 これが、一定の規模のあるメーカーのやることであれば、問題にならなかったのかもしれない。当然のことながら、開発には開発費がかかる。開発費は固定費であるから、企業の規模が小さくなればなるほど開発費の捻出は厳しくなる。

 一橋大学の延岡健太郎教授は、著書『マルチプロジェクト戦略』(有斐閣刊)の中で、自動車メーカーのシェアは車種が多くなればなるほど有利になるので、できる限り少ないベースモデル(親モデル)から派生モデルを多くつくり、車種数を増やすことが重要だと述べている。しかし三菱自工は、モデル数を削減しながら、軽自動車、普通乗用車、電気自動車と異なる技術ベースの車を総花的に開発してきていた。これが現場にきついしわ寄せになっていたのではないだろうか。

 一方、同じ1ケタシェアのメーカーであるマツダやスバルは、内燃機関に開発ターゲットを絞り、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車でスポーティな走りをする車をつくるという明確なビジョンと、身の丈に合った開発を行っている。両社はシェアは低いものの、マツダは欧州で、スバルは北米で、それぞれ強いブランド力のある自動車メーカーとして、小さいながらも存在感を示している。

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長内 厚 [早稲田大学商学学術院大学院経営管理研究科教授/早稲田大学台湾研究所研究員・同IT戦略研究所研究員/ハーバード大学GSAS客員研究員]

京都大学大学院修了・博士(経済学)。1997年ソニー株式会社入社後、映像関連機器部門で商品企画、技術企画、事業本部長付商品戦略担当、ソニーユニバーシティ研究生などを歴任。その後、神戸大学経済経営研究所准教授を経て2011年より早稲田大学ビジネススクール准教授。2016年より現職。早稲田大学IT戦略研究所研究員・早稲田大学台湾研究所研究員を兼務。組織学会評議員(広報委員会担当)、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所顧問、(財)交流協会貿易経済部日台ビジネスアライアンス委員。(長内研究室ホームページ:www.f.waseda.jp/osanaia/

 


長内 厚のエレキの深層

グローバル競争や異業種参入が激化するなか、従来の日本型モノづくりに限界が見え始めたエレキ産業は、今まさに岐路に立たされている。同じエレキ企業であっても、ビジネスモデルの違いによって、経営面で大きな明暗が分かれるケースも見られる。日本のエレキ産業は新たな時代を生き延び、再び世界の頂点を目指すことができるのか。電機業界分析の第一人者である著者が、毎回旬のテーマを解説しながら、独自の視点から「エレキの深層」に迫る。

「長内 厚のエレキの深層」

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