40代の時間術は、30代までの時間術とは大きく違う

 時間の使い方が大切なのは、どの年代も同じです。しかし、20代、30代の時間術と、40代の時間術は決定的に異なります。

 30代までは、いかに速く作業を終えるか、いかに効率的に行うかという「作業スピード」でカバーできることがほとんどです。もちろん、時間と仕事の成果は比例していませんので、それまでも効率化や高速化が成果を生み出していたわけではないと思います。

 しかし、多くの人が本当は実感していると思いますが、30代までは、成果を生み出すために結局のところ時間を犠牲にしていたのです。どれだけやり方を工夫しても、最後は時間を無理やり充てがって対処していたはずです。

 ですが、40代が抱える300%の業務量は、それまでの延長線上で“もっと努力する”ことや“さらなる改善”だけでは到底対処できません。2、3割程度スピードが上がったくらいではとても解決できる量ではないのです。

 また、これまでと同じことをやり続ければ体を酷使することになり、曲がり角を迎える40代の体は悲鳴を上げ始めます。

 40代は、時間管理の方法を根本的に見直し、仕事の進め方や意思決定、物の見方をドラスティックに変えたり、時にはこれまで身につけた勝ちパターンを思い切って捨てたりする必要も出てきます。

 スポーツ選手もベテランになれば、調整方法やトレーニング方法自体を変えるものです。30代までと同じやり方では成果につながらないだけでなく、いつか壊れてしまいます。残念ながら、40代で体や心を壊した先輩たちを私はたくさん見てきました。ビジネスパーソンもアスリートと同様に、年齢に合わせて時間の使い方や仕事のやり方を抜本的に変えていかないといけないのです。

人生を変える最大の方法は「時間配分を変える」こと

 時間は資源です。それも有限の資源です。今この瞬間から死ぬまでの持ち時間は人それぞれですが、その時間の流れこそ、人生そのものだといえます。

 多くのシニアたちが後悔することに、「時間が有限の資源だということをもっと考えればよかった」というのが筆頭にあげられますが、時間は決して増やすことができない、という当たり前の事実を痛感します。

 持ち時間の総量は常に一定です。したがって、時間術の基本は、資源となる持ち時間を、何にどう振り分けるか、というシンプルなものです。経営コンサルタントの大前研一氏は、時間について次のように語っています。

「人間が変わる方法は三つしかない。一つ目は時間配分を変えること。二つ目は住む場所を変えること。三つ目は付き合う人を変えること。どれか一つだけ選ぶとしたら、時間配分を変えることが最も効果的だ」

 人生を変えるには、時間の配分を変えるということ。時間という資源の振り分け方を見直すことが、仕事の成果を生み出すだけでなく、人生をよりよく生きる上で最も大切なことなのです。

 巷には多くの時間術があふれていますが、手帳を上手に使いこなすことや、スキマ時間を有効活用することが、時間を上手に使うことではありません。大切なのは時間に縛られることではなく、仕事の成果に焦点を合わせたり、自分の価値観や生き方に合わせて、持ち時間を何にどう配分するかということです。

 これこそが、40代が考えるべき時間の使い方です。ドラスティックに時間割を見直すことが、どの年代よりも求められているのです。小手先の技術でスケジュールを調整し、わずかな自由時間を捻出しても根本的な問題解決にはなりません。仕事の効率化は大切ですが、効率化だけでは40代が抱える問題を解決できなかったと、引退した多くの先輩たちは嘆いています。

 仕事においても人生においても、正しく優先順位づけを行い、それを実行するために時間配分をいかに変えるか──。この連載では、そのための技術と心得を『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』から一部を抜粋してご紹介します。