すなわち、携帯電話普及の時期に、本来上がるべきエンゲル係数がむしろ下がっていたので、それが生活水準の上昇が継続しているという錯覚を生じさせることになり、その結果、最近のエンゲル係数の上昇が突然の現象に見えることになったと捉えることができる。エンゲル係数上昇の犯人は意外なところにいたようだ。

 なお、傾向線に沿った動きを示している時期でも、傾向線からの乖離が目立っていたケースが、2度、認められる。一つは、1980年代後半から1990年代の前半にかけての時期にエンゲル係数が傾向線よりやや上向いたケースである。これは外食費が拡大した時期に当たっており、バブル経済の影響だと考えられる。もう一つは、2015年に前年までの傾向線から見てエンゲル係数が跳ね上がったケースであり、これは円安の進行による食料価格の相対的上昇が影響している可能性が高いといえよう。

主要国の動きの中でわが国が特異なわけではない

 日本のこうしたエンゲル係数の動きは、主要国と比較してどのような特徴が浮かび上がるのだろう。エンゲル係数の上昇はわが国だけの傾向なのだろうか?

 わが国以外では家計調査は本格的に行われてはおらず、行われているとしても基準が同一だとは限らないので、諸外国の家計調査を使うわけには行かない。そこで、作成基準が統一されているGDP統計(SNA)の国内最終家計消費の内訳から算出したエンゲル係数で各国の動きを比較してみよう(図3参照)。

 図3 主要国のエンゲル係数の推移

 欧米主要国の動きを見る限り、米国と英国を除いて、反転の時期は異なるが、日本と同様に、下がり続けていたエンゲル係数が最近上昇に転じている。しかも、日本と同様に1995~2005年の時期には、米国と英国を含めて、すべての国でエンゲル係数が下がり続けていた状況が認められる。

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情報通信革命との連動は先進国共通の動き

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