長期的には低下傾向にあったのに…

エンゲル係数を急上昇させている「犯人」は誰だ?

 家計に占める食費の割合であるエンゲル係数が最近、急上昇している。まず、最近の動きを長いエンゲル係数のトレンドの中に位置づけてみよう。図1には戦前からのエンゲル係数の長期推移を示した。

図1 エンゲル係数の長期推移

 エンゲル係数の長期推移を見ると、明治期以降、大正の1910年代まではほぼ65%前後で推移していたが、大正から昭和戦前期にかけて50%程度までに低下した。戦前においても、大正時代以降には食べ物以外の消費生活のための支出が増加し、生活の向上が図られたことがうかがえる。それでも、現在、インドのエンゲル係数が3割前後であるなど途上国でも多くの国が現在は5割を切っているのと比較すると、戦前期の日本はこれをはるかに上回っており、この時代の日本人はギリギリの生活を送っていたことが分かる。 

 その後、第2次世界大戦中や戦後直後の食糧難時代には再度エンゲル係数は60%程度まで上昇したが、経済復興の過程で1950年代に戦前水準まで低下したのち、その後の高度経済成長期の生活向上を経て現在の20%台の水準へと急速に低下した。