伊勢志摩サミットが終わりました。世界のパワーバランスの変化や参加各国の思惑の違いから、近年はサミットで経済の重大事項が決定されることは減りつつあります。今回のサミットも御多分に漏れずですが、唯一「通貨切り下げ競争の回避」が確認されました。メディアでもあまり大きな取り上げ方はされていませんが、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』では、今後の米ドル相場の方向性を決定づける内容として、詳細な分析・解説をしています。
消費税10%増税の2年半延期が決定
紆余曲折あって旧大蔵省が折れた
安倍首相が伊勢志摩サミットで「世界経済はリーマンショック直前に似ている」と唐突に切り出しましたが、参加国首脳からは「そんな危機的な状況ではない」「財政出動など必要ない」などと反論され、全く支持されませんでした。
それでも議長権限で首脳宣言には「世界経済には下振れリスクがあるため状況に応じて財政出動などあらゆる政策を動員する」と盛り込み、「そのために日本も消費増税を延期する」と押し切りました。
これで消費増税延期は“本決まり”になりました。あのまま予定通り2017年4月に消費増税を強行していたら「日本経済だけがリーマンショック状態」となる恐れもあったため、これは安倍首相の大英断としていいでしょう。
本連載でも何度か取り上げましたが、消費増税を巡っては首相官邸と旧大蔵省との壮絶な駆け引きがあり、「異次元の量的緩和」(2013年4月)や「追加量的緩和」(2014年10月)は、消費増税を実施するための旧大蔵省からの「アシスト」でした。
参考記事:安倍政権は消費増税再延期で衆参同日選挙を決意!? 首相vs旧大蔵省の壮絶なバトルが始まる!(『週刊闇株新聞』2016年4月8日公開)
それだけに旧大蔵省は消費増税再延期を何としても阻止しなければならなかったわけですが、熊本大地震等もあってここ1カ月半ほどの間に「次こそ消費増税が絶対に実行され財源が未来永劫確保されるなら再延期を呑むか…」と風向きが変わってきていました。
もちろん旧大蔵省が折れるからには消費増税以外にも、たくさんの増税策の確約がセットになっているはずで、それはこれから徐々に明らかになってくるでしょう(軽減税率の永久封印、向こう2年半の減税の封印、将来の消費増税の上限取っ払いetc)。
米国が久々にドル安政策に舵を切った
麻生財務大臣の介入は口だけに終わる
さて、消費増税延期は株価にはプラス材料ですが、為替への影響はどうでしょう。現時点ではどう考えても円高材料の方が多く揃っています。
実は伊勢志摩サミットで議論された経済問題で、唯一全体的に確認されたのは「通貨切り下げ競争の回避」だったわけですが、これに米ドルは入っていませんでした。言い方を変えれは「勝手に米ドルを買うな!」ということです。
安倍政権による「アベノミクス」(2013年1月)と、黒田日銀総裁による「異次元金融緩和」(2013年4月)「追加金融緩和」(2014年10月)以来、日本はずっと為替を円安に誘導する政策(=円売り・米ドル買い)をとってきました。
それに対し米国が異論を唱えたことは一度もありませんでした。しかし、ここにきて初めてドル安政策に舵を切り、はっきりと円安を牽制しはじめました。これは始まったばかりの流れであり、次期大統領が誰になろうと変わりません。
ここのところFRBが盛んに「利上げする」とアピールしており、それが円相場を少しだけ(110円台まで)円安に押し戻す要因になりましたが、これは「オバマ政権のうちに実施しておかないと、将来ますます利上げが難しくなる」という政治問題に過ぎません。
現在、米国では2年国債と10年国債の利回り差が1%を下回っており、さらにその利回り差を縮小させて投資魅力を減退させしまえば、米国経済に急ブレーキを掛けるだけでなく、米国からの資金流出を招いてしまう結果になりかねません。つまりFRBの利上げ期待によるドル高・円安効果は持続しないということです。
加えて日本では、消費増税の再延期が本決まりになりましたから、旧大蔵省が消費増税を確実にするための「アシスト」でやっていた追加緩和も、もう必要がなくなります。
さらに言えば、麻生財務大臣が「場合によっては必要な措置をとる」と示唆している口先介入も、実行に移されることも100%ないでしょう。現在、日本は中韓台独と共に米国財務省の「監視リスト」に入っていて、年間でGDPの2%を超えてドル買い介入(日本の場合だと年間10兆円規模)をすると「為替操作国」に指定されます。
いわば米国の身勝手な都合で脅しをかけてきているわけですが、だからといって麻生財務大臣が米国の意向を無視してドル買い・円売り介入ができるはずもありません。恐らくはいまやっている口先介入までそのうち止められてしまうでしょう。
リーマンショック以降、世界の投資(投機)資金がぱんぱんに膨れ上がっている中で、米国が国家を挙げて「ドル安政策」に踏み切った以上、それなりの結果は伴うと見るべきです。
円高に向かうのならばそのメドは?
闇株新聞が1ドル=105円と見る理由
それではここからの円相場について、具体的に考えていきましょう。
とりあえず消費増税の再延期は円相場に影響を与えません。先週末の1ドル=110円台の円相場は、FRBの利上げ発言と麻生財務大臣の口先介入にまだ期待している水準であり、米国政府が本格的にドル安政策に転じていることを十分に織り込んでいないと考えます。
したがって先週末の1ドル=110円台、とくに4月28日の1ドル=111.88円より円安になるとは考えづらく、目先は(向こう1~2ヶ月)は5月3日の1ドル=105円台を目指すと見ます。その間に参議院選挙がありますが、選挙だからと言って追加緩和期待が出ることもありませんから、やはり円安材料にはなりません。
足元では貿易収支の黒字傾向が定着して経常収支の黒字がますます拡大しており、これもドル安・円高要因です。最大の円安要因は国内機関投資家の海外資産取得がさらに加速することですが、米国がドル安政策に転じている認識が浸透していくと、いくら国内がマイナス金利といっても円安に方向を変えるほどのペースには回復しないと考えます。
ただ、1ドル=101~105円の上限に(つまり5月3日の1ドル=105.54円に)近づけば、それなりに海外資産取得が始まるため、当面はどんどん円高になるということもないでしょう。1ドル=101~105円というのは、心理要因や需給関係が合致する「居心地の良い水準」であり、年内~来年にかけてもこのレンジで落ち着くと考えます。
では、もっと長い目で見た場合は円高なのか円安なのか……については、ぜひ刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』をお読みください。「本物の投資」とは目先の値動きにドタバタするのではなく、世界各国のパワーバランスを見極め、経済の潮流を探り、巨額マネーを動かす投資家の動向に注意し、歴史にも学びながら大きな戦略を立てた上に、できるものではないでしょうか。『闇株新聞プレミアム』はリアルタイムに起こりつつあるニュースを、読者の皆さんと一緒に考え、掘り下げ、検証していくメルマガです。
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