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外資系トップの思考力
【第5回】 2016年6月7日
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ISSコンサルティング監修

物事の本質をつかむポイントは
因果関係の見極めと問題設定にある
【レノボ・グループ留目真伸社長×日本マイクロソフト平野拓也社長 対談】

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めまぐるしく変化する現代において、企業のリーダーに求められる思考力とは、何をどのように見極める力なのでしょうか。この問いに対する外資系企業のトップ10人の回答をまとめた書籍『外資系トップの思考力』から、レノボ・グループの留目真伸社長と日本マイクロソフトの平野拓也社長のスピンアウト特別対談をお送りします。
近い業界で同じ40代のリーダーとして活躍し、奇しくも社長就任発表も同日だったという不思議な縁のあるおふたりが、リーダーに求められる思考力のポイントはどこにあるのか、そして、その思考力を実際に生かして両社が手がけるコンピューティング・ビジネスの未来をどのように考えているのか、語り合います。(執筆・構成:谷山宏典)

物事の本質は
ロジカルシンキングだけでは見通せない

留目 製品等の発表会ではちょくちょくお目に掛かるのですが、こうして改まってお話しするのは、ちょっと照れますね。

平野 そうですよね。Windows 10やOffice 2016の発表イベントのときも来ていただいて。

留目真伸(とどめ・まさのぶ)日本レノボ・グループ社長/1971年東京都生まれ。94年早稲田大学政治経済学部卒業。トーメン(現豊田通商)入社。99年戦略コンサルティング会社モニターグループ(現デロイト トーマツ)入社。2002年デル・コンピュータ(現デル)入社。2006年レノボ・ジャパン入社、常務執行役員。11年よりNECパーソナルコンピュータ取締役を兼任。12年レノボ・グループ米国本社の戦略担当部門エグゼクテイブ・ディレクター。13年レノボ・ジャパン執行役員専務。15年より現職。(撮影:住友一俊)

留目 お互いに乗り入れたイベントも多いですしね。一部のハードで競争になる部分もありますが、クラウドサービスを中心にコンピューティングをさらに広く普及させていく点では互いの力が必要ですから、パートナーシップも強化していますね。

平野 後から両社の具体的なビジネスの話も少し出てきそうですが、最初に今日のお題と言われた思考力について言えば…
『外資系トップの思考力』で留目さんが指摘されていた「ロジカルシンキングだけでは本質から外れてしまうことがある」というお考えは、私自身も共感する部分でした。ビジネスにおいて意思決定をして組織を動かすとき、ロジカルシンキングで理路整然と思考のプロセスを整理して相手に伝えることはもちろん大切ですが、それ以外の、たとえば「まわりの人間をどのようにして巻き込むか」「その組織の文化をどのように作っていくか」といった人のエモーションに作用したり、組織のカルチャーを作り上げることのほうが実は重要なのではないかと、私も日頃から考えていたからです。

留目 本書に、平野さんがマイクロソフトの中東欧地域のゼネラルマネージャーだったときのエピソードが出てきますよね。各国・各地域の独立採算制をやめて、中東欧エリアとして財布をひとまとめにしたところ、人やお金を適切に投入する効率的かつスピーディなリソース配分が可能になったという。そのご判断も、きっとロジカルシンキングだけでは見えてこなかったことではないでしょうか?
 中東欧のように人種や宗教、ビジネス環境がバラバラな地域を統括する場合、論理的に考えれば「個別に管理させた方がいい」という判断になるはずです。しかし、一人ひとりがどのようなモチベーションで働いているのか、利益の取り合いになっていないかといった、ロジカルに機能していない部分をしっかり見通せたからこそ、「独立採算をやめる」という意思決定につながったのではないかと想像します。

平野 しがらみも多いですしね。

留目 どうしても過去の経験などを前提にして考えがちですが、本質をつかむには、それまでの先入観や経験をいったんすべて捨てて、ゼロベースで考えを組み立てていくことが必要です。そうすると、平野さんが本書で「インサイト(洞察、気づき)」と表現されていたような、目の前の事象の根幹にある本質的なことが見えてくるのではないでしょうか。

平野拓也(ひらの・たくや)日本マイクロソフト社長/1970年北海道生まれ。95年米国ブリガムヤング大学卒業後、カネマツUSA入社。98年アーバーソフトウェア(ハイペリオン・ソフトウェアと合併し、ハイペリオン・ソリューションズに変更)入社、2001年ハイペリオン日本法人社長。05年マイクロソフト日本法人入社。07年執行役常務、11年マイクロソフト中東欧地域統括ゼネラルマネージャー、14年日本マイクロソフト執行役専務マーケティング&オペレーションズ担当、15年3月代表執行役副社長、同7月より現職。

平野 ロジカルシンキングだけなら、一定の経験やトレーニングを積めば、誰でもできることですよね。

留目 たしかに、物事を論理的に考えることができる、いわゆる“賢い人”は自分のまわりにも大勢います。彼らはたいてい、同じデータを見たら、同じような解答を導き出します。

平野 だからといって、全員が全員、高いパフォーマンスを発揮できるかといえば、そうではない。結局、ロジカルシンキングが得意な人は、往々にして状況説明だけで終わってしまいます。「パフォーマンスが悪かったのは、こうした理由のためで……」と状況の分析は的確にできているのですが、本質的なことがまったくつかめていない。
大事なことは、なぜそういう現象が起こってしまったのか、そこにかかわった“人”の問題です。社員たちのモチベーションが上がらなかったのはなぜか。お客様がわが社の商品やサービスに興味を持ってくれなかったのはなぜか。自分たちの仕事や組織にかかわるすべての人――社員、パートナー、お客様が何を望んでいるのかというポイントが、仕事や組織をドライブさせる根幹にあります。そこをきちんと理解してつかんでおかないと、ロジカルな分析や説明も上っ面だけになり、問題解決や目標達成に何の役にも立たないものになってしまいます。

留目 物事の本質をつかむには、2つのポイントがあると私は思っています。ひとつは、因果関係を見極めて、何をどうすればどんな結果が出るのかを理解することです。ある面ではロジカルシンキングと似ているのですが、先ほど平野さんがおっしゃった「個々の人が何を感じて、どう動くか」という人のモチベーションのような、ロジカルシンキングだけではわかりづらい要因も含まれます。

平野 留目さんは『外資系トップの思考力』中で、ロジカルシンキングが前提にするような完璧に見える社会や組織はない、完全競争なんてないんだ、と強調されていました。

留目 そうです。世の中には、ふたを開けてみれば、不完全なことや論理的ではないことが山ほどありますよね。社会や組織も人の集団であり、みんながみんな完璧で論理的であることはあり得ないためです。そうした不完全さを前提にしたうえで、物事が動いている仕組みというか、人のエモーショナルな部分や組織のカルチャーまで含めた因果関係を洞察していかなければ、人や組織、事業をドライブさせる本質はつかめません。

平野 おっしゃるとおりですよね。2つ目のポイントは?

留目 もうひとつは、「どんな課題を設定するか」に本質にかかわる議論があると考えます。たとえば、われわれレノボはハードウェアの会社ですけど、パソコン業界という狭い枠組みの中だけで考えてしまうと、「パソコン業界で生き残るにはどうすればいいのか」という課題しか見えてきません。しかし、その問いに対する答えが、われわれのビジネスの本質なのかといえば、そんなことは決してない。目の前で起こっている現象にとらわれず、コンピューティングの未来にまで視点を広げて、「われわれのビジネスは何を目指しているのか」「何のためにわれわれは仕事をしているのか」というより根源的な問いかけに変えていかないと、本質は見えてこないのではないでしょうか。

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