グーグルには絶対に予測できない質問

本書は、質問を次から次へと検討していく構成になっている。質問の数は全部で44。これをセグメントとして各章は成り立っているが、各セグメントにはさらに多くの質問が組み込まれている。

 本書のあちこちに33本の「補足記事」をちりばめ、強力な(時に斬新な)質問で始まる画期的なアイデアやイノベーション、新しい思考方法に関するエピソードを紹介している。

 さて、そもそも「美しい質問」とは何か?

 本書の土台となった「ア・モア・ビューティフル・クエスチョン」というブログでこれについて検討したとき、私はかなり主観的な定義をした。

「ア・ビューティフル・クエスチョン」(美しい質問)とは、私たちが物事を受け止める、あるいは考える方法を変えるきっかけとなる野心的だが実践的な質問のことである――さらにそれは、変化を引き起こす触媒となり得る。

 つまり、「なぜ我々はここに存在しているのか?」「善とは何か?」「死後の世界はあるのか?」といった問いは、いつまでも終わらない熱い議論を呼び起こすものだが、本書はこの手の哲学的、あるいは精神的な問いを対象としてはいない。私にはこれらについて論じるだけの知識も見識もないし、そもそもそうした問いは「実践的」ではないからだ。

 本書で取り上げたいのは、行動に結びつく疑問、目に見える形で確認できる結果や変化に結びつくような質問だ。

 著名な理論物理学者であるエドワード・ウィッテンはかつて、「私はいつも、回答しがいがあるほどに難しく(そして面白く)、実際に答えられる程度にはやさしい質問を探している」と語った。

 そのような質問は、グーグルの検索ボックスに入力して探すような類の「知りたいこと」とは違い、それほど頻繁に発することのできるものではない。

 現代は「質問の黄金時代」と呼ぶべき時代かもしれない。オンラインのソースからすぐに答えが手に入るのだから、人々の質問の数が以前よりも多くなるのは当然のことだ。しかしこの「黄金」は純粋に量に基づくもので、必ずしもその問いの質や思慮深さに基づくものではない。

 実際、グーグルでは「どの有名人がゲイなのか」という質問が最も人気のある検索フレーズに入っている。また、グーグル検索はあまりに創造性がなく、意外性もないので、検索語が3ワードも入力される前にグーグルの側が検索フレーズを推測できてしまうことさえ珍しくない。

 本書はグーグルが容易には予想できなかったり、適切に答えられないような質問、グーグルとは違う種類の検索を必要とする質問のほうに焦点をあてていく。

Q:自分のビジネスを際立たせるにはどのような新鮮なアイデアがあるだろう?
Q:自分の仕事や芸術にこれまでとまったく違う方法で取り組んだらどうなるだろう?
Q:自分のコミュニティや家族に影響を及ぼす長期的な問題にどのように対処すればよいだろう?

 これらは、個別的で、難解で、ゲームのルールを変えてしまうかもしれない問いだ。

 質問の価値を探りながら、私は、いま何が問題で、好機はどこに眠っていて、どうすればそんな好機をつかめるのかと考えてきた。その過程で私は、以前よりもいまのほうが、そして将来はさらに「質問」が重要になっていくと確信するようになった。

私たちは皆、よりよい答えを心の底から求めている。しかし、そんな答えを得るために、まずは「正しい質問をする方法」を学ぶことから始めなくてはならない。

(本連載は、書籍『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』より引用しています)