「Qストーミング」で質問を改善する

 ビジネスの世界では、ハル・グレガーセン(インシアード教授)が大企業におけるQストーミングの研究を続けており、従来のブレインストーミングよりも効果が高いことを見出している。

「アイデアを求めて行われる通常のブレインストーミングは、無駄に多くのアイデアが出てきて壁にぶつかることがよくあります」とグレガーセンは言う。「その理由の一つは、間違った問いに基づいて考えているからです」。問題に取り組んでいて、「出口が見えなくなり、立ち往生してしまったと感じたときは、一歩後ろに下がり、Qストーミングをすべきです」。

 グレガーセンはよくグループのメンバーに、考えようとしている問題について少なくとも50の疑問や質問をひねりだすようにとアドバイスする。だれもが見える場所にそれを書き出していくと、「他のメンバーも問うことの重要性に注意を振り向け、もっと良い質問を考え始めます」。

 普通は、アイデアよりも疑問を思いつくほうが簡単だ。空中のどこかからアイデアを思いつく、あるいは途方もなく独創的な方法でアイデアを結びつける必要がない。少しだけ異なった視点からその問題を眺めてみるだけでよいのだ。

 世界中のおよそ100のQストーミングを観察した結果、グレガーセンはある種のパターンに気づいた。「問いの数が25ぐらいまでくると、いったん『問いはもう出尽くした』といった雰囲気がしばらく漂うかもしれません。ところがそこを超えて、50、あるいは75までくると、最も素晴らしい問いが出てくるのです」

 RQIのQストーミングでは、問いの「数」を多く出すよりも、クローズド・クエスチョン〔「はい」「いいえ」など、回答範囲が限定される質問〕をオープンにし、オープン・クエスチョン〔「どう思う?」など、回答範囲が限定されない質問〕をクローズドにすることによって、問いの「質」をなるべく早く改善していくことを重視している。

 鍵となるのは、グループ討論を通じて「ベスト・クエスチョン」を求めることだ。ブレイン・ストーミングの場合は、この方法を採るとたいてい大きな問題にぶつかる。多くのアイデアは出ても、「ベスト・アイデア」を選び出す方法はわからないことが多いのだ。

 ベストを選ぶのであれば、問いのほうがずっと簡単だ。というのも、最も素晴らしい質問には「磁力」があるからだ。人はその質問に魅了され、それについてもっと調べたくなる。

 RQIは、参加者が探求を続けたくなる3つの大きな問いを選び出すよう勧めている。Qストーミングはブレインストーミングよりも現実的で、結果を出しやすい。「答え」を得ようと思って(そうなることはほとんどなく、参加者はフラストレーションを感じることになる)ミーティングに臨むのではなく、数は少ないものの強力な問いを出してミーティングを終える――このほうが、進んでいく方向性と推進力を得られるだろう。