この「3語」が思考のスイッチを入れる

 世界の最先端を走っている企業がブレインストーミングを改革しようとしている様子を研究しているうちに、興味深いトレンドが浮かび上がってきた。それは、3語を使った特定の質問形式「How might we?」(どうすればできそうか?)だ。これは、イノベーターを目指している人たちが、正しい問いを考えられる簡単な方法だ。

 この質問は驚くほどの効果を発揮する、そして質問の仕方一つで創造的な思考や自由奔放な協力が促される、とこの方法の提唱者、ビジネス・コンサルタントのミン・バサデューは言う。

「企業内でイノベーションを起こそうとする人たちは、創造性を促すどころか、阻止しかねない言葉を使って自分たちの直面している課題について語ることが多いのです」

 バサデューは過去40年にわたって「How might we?」(HMW)の質問形式をさまざまな企業に教えてきた。バサデューによれば、「人はつい『どうすればこれをできるだろう?』『これをどうすべきだろう?』と問うことから始めてしまいます。けれども、『can』や『should』を使い始めた瞬間、あなたは暗に『自分たちは本当にこれをできるのだろうか? そしてすべきなのか?』という判断をしていることになります」。

 ところが、「できそうか」(might)という言い回しをすると、「自分の判断を先送りできるのです。すると人は自由に選択肢をつくり出し、多くの可能性を開けるようになります」。

 IDEOの最高経営責任者ティム・ブラウンは、どのような種類のものであれ、彼の会社が何かをデザインしなければならないときには、つねに「どうすればできそうか?(How might we?)」という質問から入るという。

 ブラウンは、この3語(How might we?)は、それぞれが創造的な問題解決を促す役割を担っていると考えている。

「How(どうすれば)という言葉は、解決法があることを前提としています。創造性に対する確信を与えてくれるんです。might(できそう)には、アイデアが実現するかもしれないし、しないかもしれないが、まあどちらでもいいじゃないか、というニュアンスがある。そしてwe(我々)は、この課題にこれから皆で取り組むのだ、お互いのアイデアを土台にしていくのだ、ということを示しています」